story3 ページ5
.
「九条。お前のところの新人、どうにかならないのか」
「どうにか、とはどのような意味でしょう?」
彼女の部下になって数ヶ月。
退屈はさせない、と彼女が言った通り、目が回るような忙しい毎日を送っていた。
書類を抱えて警察庁の廊下を足早に進んでいたとき、上司の話し声が聞こえてきて思わず足を止める。
「…降谷とか言ったか?あの容姿は悪目立ちし過ぎだ」
この声は、九条が狸親父と称していた警察庁幹部の男だろう。
自身のこの容姿が目立つのは、重々承知している。
日本人離れしたこの外見で、今までも腐るほど苦労してきた。
「肌の色はどうにもできないが、髪は染めるとかなにかあるだろう。そういう指導をしないのか」
思わずギリ、と奥歯を噛み締める。
いつか言われるであろうことは、予想していた。
予想はしていたけれど、納得はいかない。
どんな外見であろうとも、俺はこの国に生まれ育った日本人だ。
髪や目の色だけ揃えて、何になるというのか。
「失礼ですが、私には指導の必要性を感じません」
凛と響いた声に、思わず俯いていた顔をあげる。
「彼は日本で生まれ育った、歴とした日本人です。愛国心も、公安警察官としての能力も申し分ない。そんな彼に、髪や目の色を黒くさせる理由がありますか?髪や目の色は、生まれ持ってきたもの。彼に非があるわけでもなく、また隠すようなものでもないでしょう」
「…っ…」
淡々と答える彼女の言葉に男は口をつぐみ、吐き捨てるように言った。
「いつか足元をすくわれても知らんぞ。お前も、そのよく回る口でここまできたようだが、女は大人しく男の機嫌をとっていればいいんだ」
「私が育てた部下に足元をすくわれるなら、本望ですね。…あぁ、それから。そういった女性がお好みでしたら、他をあたってください。天地がひっくり返っても私にはできそうにありませんので」
まるで意に介さない様子の九条に、男は汚い舌打ちを残して足音荒く立ち去っていく。
俺は呆然と、彼女の言葉を脳内で繰り返していた。
そんな風に言われたことも、かばってもらったことも初めてだったから。
.
1362人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
松田陣平の姪っ子は子供なのに警察官!?
幼馴染(正義感の塊)がうちの組織(真っ黒)に来てしまったんだが。
【名探偵コナン】交通事故で死んだらあの世界に転生して立派な大学生!? 2の章。
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぱんだ(プロフ) - 朝顔さん» はじめまして!他のぱぱんだ作品も見ていただけたようでとても嬉しいです!これからも更新頑張りますね(*^^*) (2018年6月19日 17時) (レス) id: d7440f8beb (このIDを非表示/違反報告)
朝顔 - はじめまして。どの作品もとっても素敵ですごく感情移入して読めました!!これからも応援してます! (2018年6月19日 11時) (レス) id: e330775e06 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 伏見さん» こんばんは!コメントありがとうございます(*^^*)悶えていただけるほど可愛く書けたようで、嬉しく思います(笑) そしてこちらこそ読んで下さってありがとうございます(*^^*)これからも、ぜひお付き合い下さいね! (2018年5月31日 22時) (レス) id: d7440f8beb (このIDを非表示/違反報告)
伏見(プロフ) - こんばんわ!小説読んで九条さん可愛いイイイイイイってめっちゃ悶えました...kawaiiの暴力です...こんな素敵な小説をありがとうございます!! (2018年5月31日 21時) (レス) id: 28d5c19c28 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - Kanoさん» おぉ…!何やら熱烈な告白を受けた気分になりました…!(やめなさい)ありがとうございます!そう言っていただけると、本当に励みになります(*^^*)これからも更新頑張ります! (2018年5月16日 17時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年5月7日 21時