story21 ページ26
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「…!大丈夫ですか…?」
「っ、沖矢さん…?」
何故ここに、と言いたげな視線を腕の中から受けつつ彼女の足元を見れば、ヒールが見事に折れてしまっていた。
「…あぁ…そろそろ替えようかと思ってたのに…」
替える前に寿命がきてしまった、とAさんはヒールを見て呟く。
「それでは歩けないでしょう。少し待っていて下さい」
ひょい、と彼女を抱えて近くにあったベンチへと座らせる。
「…ちょ…っ、え…っ?」
驚きで戸惑うAさんに、もう一度待っているよう念を押して、俺は近くの靴屋へと入っていった。
「…とりあえず、これを履いて下さい」
似たようなパンプスを購入し、Aさんの足元に跪くようにして靴を履かせれば、彼女は戸惑ったように瞳を揺らして。
「何から何まですみません…あの、靴の代金を…」
「構いませんよ。プレゼントです…あ、安室さんに叱られてしまいますかね?」
靴を履かせ終えて、にこり、と笑みを浮かべて顔を上げれば、彼女の冷たい瞳とかちあって思わず身構えた。
「!」
「ずいぶんと羽振りのいい大学院生だな?…それにしても27歳とは、少しサバをよみすぎじゃないか?…FBIの、赤井秀一捜査官」
君は私と同じ年だろう?と冷えた笑みに見つめられる。
「…Aさん…?なんのことだか…」
首をかしげてとぼけてみせるが、彼女の笑みは変わらず、その漆黒の瞳は本来の俺を見透かすかのように鋭い。
「さっき私を抱き上げた時に触れた胸板や腕は、とても普通の大学院生のものとは思えないし…この靴も。一度会っただけの女性に贈るには上等すぎる。大学院生がポンと贈れる品物ではないだろう?」
肩をすくめた彼女は、まるで隣に座れ、と言わんばかりに自分の横を指し示した。
ずっと彼女の足元に跪いているわけにもいかないので、静かに隣に腰を下ろす。
「安心してくれ。別に私はあいつのように、君を取って食おうなどとは思っていない」
「……あなたは、一体…」
何者ですか、と問えば彼女は薄い笑みを浮かべて。
「どうせ当たりはつけてあるんだろう?君は安室透の正体を知っているんだから」
ポアロで彼女を見掛けたあと、調べてはいた。
あの彼が本当に慕っているようだったので、黒ずくめの組織の人間ではないだろうとの見解は、ボウヤと一致した。
先日、彼の本名と公安所属であることがわかったので、恐らく…
「…公安の同僚か?」
「ふむ。ほぼ当たりだ」
「ほぼ…?」
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ぱぱんだ(プロフ) - 朝顔さん» はじめまして!他のぱぱんだ作品も見ていただけたようでとても嬉しいです!これからも更新頑張りますね(*^^*) (2018年6月19日 17時) (レス) id: d7440f8beb (このIDを非表示/違反報告)
朝顔 - はじめまして。どの作品もとっても素敵ですごく感情移入して読めました!!これからも応援してます! (2018年6月19日 11時) (レス) id: e330775e06 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 伏見さん» こんばんは!コメントありがとうございます(*^^*)悶えていただけるほど可愛く書けたようで、嬉しく思います(笑) そしてこちらこそ読んで下さってありがとうございます(*^^*)これからも、ぜひお付き合い下さいね! (2018年5月31日 22時) (レス) id: d7440f8beb (このIDを非表示/違反報告)
伏見(プロフ) - こんばんわ!小説読んで九条さん可愛いイイイイイイってめっちゃ悶えました...kawaiiの暴力です...こんな素敵な小説をありがとうございます!! (2018年5月31日 21時) (レス) id: 28d5c19c28 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - Kanoさん» おぉ…!何やら熱烈な告白を受けた気分になりました…!(やめなさい)ありがとうございます!そう言っていただけると、本当に励みになります(*^^*)これからも更新頑張ります! (2018年5月16日 17時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年5月7日 21時