story20 ページ25
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突如、甲高い女性の悲鳴が聞こえて振り返る。
「ひったくりよ!誰か捕まえて〜っ!」
その言葉に、自然と体が動く。
自分の進行方向とは逆に走り去っていく、ひったくり犯の男の背を目指して足を動かす。
一緒にいたボウヤも、すでに同じように走り出していた。
「昴さん!」
「問題ない」
思わず素で答えを返してしまいつつ、ひったくり犯を追う。
もうすぐで追い付きそうだと思った時、横の路地から出てきた黒のパンツスーツ姿の女性とひったくり犯が接触しそうになる。
「お姉さん危ない!!」
ボウヤが声を上げた瞬間、男が宙を舞った。
「!?」
驚きに二人して思わず足を止めれば、見事な背負い投げをきめられた男は、路上に伸びていて。
静かに男を見下ろしているその人は、見覚えのある女性だった。
「…え…?Aお姉さん…??」
「…ん?あぁ、ポアロで会った…コナンくんと、沖矢さん…でしたっけ?」
「えぇ、お久しぶりです」
とりあえず挨拶を返すものの、彼女の雰囲気が以前とまるで違っていて戸惑う。
上等な黒のパンツスーツに、きっちりとまとめられた髪は、男を投げたというのに少しも乱れていない。
「…Aお姉さん、強いんだね!」
ボクびっくりしたよ、とボウヤが言えば、彼女は照れたように微笑んで。
「実は護身術で習ってて…うまくいってよかったわ」
「そうだったんですね…今日はまた、以前とは雰囲気が違うので驚きました」
思わず探るように言葉をかければ、彼女は変わらずに頬笑む。
「今日は仕事の途中なので。やっぱり恋人と会う時とは違いますよ」
「そうなんだ!お姉さんのお仕事って…」
「ありがとうございます!!」
ボウヤが尋ねたところに、ひったくりの被害者である女性が息も絶え絶えにやってきた。
「はい、どうぞ」
「すみません…!本当にありがとうございました!なんてお礼をしたらいいか…!」
「いいえ。偶然通りかかっただけですから、お気になさらず」
彼女がにこやかに男から取り戻した鞄を女性に返していると、パトカーもやってきてその場はずいぶんと賑やかになる。
ボウヤが知り合いの刑事と話をしている間に、スッと彼女が姿を消したことに気付いた俺は、静かに後を追った。
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カツ、カツとヒールを鳴らして歩く後姿を見つけて、そのまま後をつけようかと思った時、がくんと彼女の体が傾いて、思わず手を伸ばして抱き留める。
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ぱぱんだ(プロフ) - 朝顔さん» はじめまして!他のぱぱんだ作品も見ていただけたようでとても嬉しいです!これからも更新頑張りますね(*^^*) (2018年6月19日 17時) (レス) id: d7440f8beb (このIDを非表示/違反報告)
朝顔 - はじめまして。どの作品もとっても素敵ですごく感情移入して読めました!!これからも応援してます! (2018年6月19日 11時) (レス) id: e330775e06 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 伏見さん» こんばんは!コメントありがとうございます(*^^*)悶えていただけるほど可愛く書けたようで、嬉しく思います(笑) そしてこちらこそ読んで下さってありがとうございます(*^^*)これからも、ぜひお付き合い下さいね! (2018年5月31日 22時) (レス) id: d7440f8beb (このIDを非表示/違反報告)
伏見(プロフ) - こんばんわ!小説読んで九条さん可愛いイイイイイイってめっちゃ悶えました...kawaiiの暴力です...こんな素敵な小説をありがとうございます!! (2018年5月31日 21時) (レス) id: 28d5c19c28 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - Kanoさん» おぉ…!何やら熱烈な告白を受けた気分になりました…!(やめなさい)ありがとうございます!そう言っていただけると、本当に励みになります(*^^*)これからも更新頑張ります! (2018年5月16日 17時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2018年5月7日 21時