【花】眠れない夜は。 ページ10
※桜桃様リクエスト
※本編終章「夜はなかなか眠れず…」のお話
沖矢昴として初めて会ったとき、Aは貧血をおこして倒れるところだった。
ボウヤから彼女の体調が悪そうだと聞いて、結局いてもたってもいられなくて。
かといって、沖矢昴になった自分が何を出来るでもなく、何の考えもなくふらりと彼女の部屋の近くへ足を向けたところだった。
あの時は安室君…降谷君にAを渡すことしかできず、歯痒い思いをした。
だが、生きていることを明かした今なら、Aの体調が戻るまで傍にいることができる。
今までの分を取り返せるとは思わないが、少しでもAの傍にいたかった。
降谷君との電話で、俺が面倒をみると言ったあと、Aはそんな迷惑をかけられない、自分は大丈夫だから、とそう言ったが、俺がまるで聞く耳を持たないのがわかって諦めたようだ。
さらり、と眠っているAの髪を撫でる。
夕飯はあまり食べなかったが、Aは終始嬉しそうに微笑んでいて。
風呂のあと、うとうとしていたAを抱きしめるようにしてベッドへ入れば、彼女はすぐに眠ってしまった。
安心したのだろうか。それならば嬉しい。
明日はAが食べれそうな物を何か作ろう、そう思って俺も瞳を閉じた。
「…っ…ぅ、…ゃ…っ…」
微かに聞こえる声に、ふ、と意識が浮上する。
腕の中のAを見れば、ひどくうなされていた。
「A、A…大丈夫か?」
軽く揺するようにして、Aを起こす。
きつく閉じられていた瞳がゆっくり開いて、ぽろぽろと涙を溢した。
「…しゅ、いち…さん…?」
「あぁ…大丈夫か?怖い夢でもみたのか」
震えるその背を撫でながら、涙で濡れるアイスブルーの瞳をのぞきこめば、Aはふるふると首を振って。
「…だい、じょうぶです…ごめん、なさい…」
「謝らなくていい。無理をするな」
泣きながらも大丈夫だというAにたまらなくなって、きつくその体を抱きしめた。
ずいぶん細くなってしまった体に、後悔が押し寄せる。
「…秀一、さん…」
「あぁ、大丈夫だ。ここにいる」
俺の胸に顔を埋めるようにして、Aはしばらく泣いて。
俺はただ、ひたすら抱きしめてその背を撫で続けた。
泣き疲れて、また眠って。
眠ったと思ったら、またうなされて。
Aがようやく眠れたのは、明け方近くだった。
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ぱぱんだ(プロフ) - grenouilleさん» いつもありがとうございます(*^^*)そうなんです、作品数が増えてきて自分でもわからなくなってきて(笑)ついにまとめました(*^^*)これからも可愛い夢主目指して頑張ります! (2018年5月17日 12時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
grenouille(プロフ) - ぱぱんださんの作品は大好きだから全部読んだと思っていたら、今朝、まとめてくださってたので、こちらを見つけられました!花・海シリーズも優男も本当に大好きです!ぱぱんださんの夢主はほんとにかわいいです!忙しいでしょうけど、今の作品も応援してます^ ^ (2018年5月17日 10時) (レス) id: 9364f4193b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 笑顔の似合う少女。さん» 有り難いお言葉ありがとうございます!寂しいだなんて…!頑張ります!(笑) (2018年2月8日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 湯葉さん» ファンだなんてありがとうございます…!そしてリクエストもありがとうございます。例の発信器ですね(笑)かしこまりました!ぜひ、書かせていただきます! (2018年2月8日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
笑顔の似合う少女。(プロフ) - 番外編の続編も悪くないと思います!むしろ、このまま終わっちゃうのは、寂しいです(笑) 続編、作っていただけると嬉しいです! (2018年2月8日 18時) (レス) id: c8e9e68a05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2017年11月11日 11時