【海】風見は見た。2 ページ9
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今の時刻は、午前6:00。
俺は警察庁の廊下を歩いている。
あの指輪騒動からひと月がたち、噂もだいぶ落ち着いてきた。
復帰した如月さんは、毎日バリバリと仕事をこなしていて、ここ数日家に帰っていない。
通常に戻ったといえばそうだが、病みあがりにあまり無茶はしてほしくない。
昨夜も俺を送り出し、自分はもう少し残っていくと言っていたし。
帰っていればいいが、警察庁に泊まっているようなら、そろそろ降谷さんに連絡を入れようかと思って今日は早めに来たのだ。
降谷さん自身も忙しく、ここ数週間姿を見ていないからきっと心配しているだろう。
静まり返るオフィスの扉を開ければ、フロアには誰もいない。
帰ったのだろうか。一応、仮眠室も覗いておこう。
仮眠室へと足を向けながら、ふと思い出す。
尊敬する上司と先輩が、どう見ても相思相愛なのに、お互いをひどく切ない目で見つめていたことを。
そう、あれはまるで、叶わぬ恋のようだった。
警察学校時代の同期だと言っていたので、長い付き合いの中で何かがすれ違い、拗れてしまったのかもしれない。
でも、そのすれ違いも拗れも、あの日…如月さんが生死をさ迷った日を境に、なくなったように思う。いろいろと吹っ切れたのだろうか。
何故だか俺が、ひどく安堵したのを覚えている。
ともあれ、叶った恋はとてもあの二人を輝かせていた。
自分も彼女が欲しいな、と思うほどには。
ひとつ苦笑して、仮眠室と書かれたドアをそっと開けた。
中はカーテンで仕切られていて、ベッドが2つある。
カーテンの下に女性物の靴が見えれば、如月さんがいるかどうかわかるだろう。
さすがに寝顔を拝むのは、気が引けるので。
カツ、と足を踏入れれば、ひとつのベッドは空いていて、もうひとつのベッドはカーテンが中途半端にかかっていた。
「……!!」
そこには、如月さんが眠っていた。
ーー降谷さんに、抱きしめられながら。
「………………」
しっかり数秒間固まった俺は、とりあえず落ち着こうと瞬きを繰り返した。
うん、見間違えじゃない。
降谷さんと如月さんが、寄り添うようにして眠っている。
疲れがピークに達して、二人して倒れるようにして眠ったのだろう。
二人を起こさないように、そっとカーテンを締める。
静かに仮眠室を後にして、ようやく息を吐いた。
見てはいけないものを、見てしまった。
独り身の男には堪えるほどの、幸せそうな寝顔の二人を。
fin.
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風見さん好き(笑)
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ぱぱんだ(プロフ) - grenouilleさん» いつもありがとうございます(*^^*)そうなんです、作品数が増えてきて自分でもわからなくなってきて(笑)ついにまとめました(*^^*)これからも可愛い夢主目指して頑張ります! (2018年5月17日 12時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
grenouille(プロフ) - ぱぱんださんの作品は大好きだから全部読んだと思っていたら、今朝、まとめてくださってたので、こちらを見つけられました!花・海シリーズも優男も本当に大好きです!ぱぱんださんの夢主はほんとにかわいいです!忙しいでしょうけど、今の作品も応援してます^ ^ (2018年5月17日 10時) (レス) id: 9364f4193b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 笑顔の似合う少女。さん» 有り難いお言葉ありがとうございます!寂しいだなんて…!頑張ります!(笑) (2018年2月8日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 湯葉さん» ファンだなんてありがとうございます…!そしてリクエストもありがとうございます。例の発信器ですね(笑)かしこまりました!ぜひ、書かせていただきます! (2018年2月8日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
笑顔の似合う少女。(プロフ) - 番外編の続編も悪くないと思います!むしろ、このまま終わっちゃうのは、寂しいです(笑) 続編、作っていただけると嬉しいです! (2018年2月8日 18時) (レス) id: c8e9e68a05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2017年11月11日 11時