花または海のような人【番外編】

【花】続・愛しいもの。3 ページ30

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「兄さん、外に出るときと、帰ってきたときには必ず連絡しろって言うんだって」

「…それはまた…まぁでも外出先で何かあっても困るからな…」

「…あ、共感しちゃうんだ」

「うるさい」

コーヒーを飲みながら話をしていれば、姉さんはすぐに戻ってきた。

「二人に会ったって言ったら、秀一さん驚いてたわ。君は日本まで買い物に行ったのか？って」

「あはは！突然来ちゃったもん。驚くよね」

「でも喜んでたわ。今日は早く帰ってくるって」

「ふん。別に俺は赤井はどっちでも…」

「素直じゃないんだから〜」

それから、夕飯の仕度をするという姉さんにくっついて、三人でキッチンに立つ。
あれこれ言いながら夕飯の準備をして。
こんなに賑やかで、楽しい時間は久しぶりだ。

調理が終わり、赤井待ちとなって再びリビングへ戻ると、ゆきは興味津々といった様子で、姉さんのこちらでの様子や、妊娠してからのことなどを聞いていた。

「でもなんかすごいな…ここに、姉さんたちの赤ちゃんいるんだね…」

「えぇ、不思議よね。でも耳は早いうちから聞こえるんですって。だからたくさん話しかけてあげるといいって言われたの」

「そうなんだ！ゆきちゃんだよ〜！」

「おいおい、ゆきおばさんだろ？」

苦笑すれば、物凄い目で睨まれた。
そんじょそこらの殺人犯より恐い。

「はぁ!？絶対、ゆきちゃんって呼ばせるの！」

「零ちゃんはおじさんって呼ばれたいの？」

「別にそう言う訳じゃ…」

「じゃあほら！零も今のうちから声かけといた方がいいよ！零くんでちゅよーって」

「馬鹿！何言って…」

「でもせっかくアメリカまで来てくれたんだから、何か声をかけてあげて？」

「…………………」


ほら、と姉さんに手を取られ、お腹の上に当てられる。
ここに、いるのか。新しい家族が。
なんとも言えない感情が込み上げてくる。

少し気恥ずかしいけれど、この世に出てくる前に、叔父としてひとつくらい挨拶をしておかなければ。




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