【花】愛しいもの。4 ページ27
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「嬉しいです…秀一さんとの赤ちゃん、ここにいるんですね…」
そっとお腹を撫でれば、彼もひどく優しく目尻をさげて、私の手に大きな左手を重ねる。
「…あぁ、そうか…ここにいるのか…何だろう。まだ見えないというのに、とても愛しく感じるよ」
「ふふ、私もです」
顔を見合わせて、そっと口付けて。
優しく私の頬を撫でたあと、秀一さんはそれにしても、と数分前の出来事を振り返る。
「てっきり何かの病気かと思って焦ってしまったな…Aは冷静だったのに」
「なんとなく、予感があって。それに病院に行くにしても、どこの産婦人科がいいのかわからなくて…とにかく、検査してから秀一さんに相談しようと思ってたんです」
「そうか…よし、任せろ」
そう言ってからの秀一さんの行動は早かった。
翌日の休みをもぎ取り、近所で通いやすく評判のいい産婦人科をリストアップして。
私の意思を尊重しながら病院を決め、夕飯の仕度も片付けもほぼこなし、お風呂の準備に至るまで私が手を出す隙を与えなかった。
何だかすでに、元々過保護なのに更に拍車をかけそうな予感である。
今日は早めに休もう、と言う秀一さんに連れられ、二人でベッドへ潜り込む。
すぐに抱きしめられて、彼の広い胸に頬を寄せた。
「今日は色々ありがとうございます…でも秀一さん、その…大丈夫ですよ?」
「俺がしたいんだ。いいだろう?」
そう言われてしまえば、口を挟む隙もない。
もうここは大人しく甘えておこう。
「最近は仕事で、Aとゆっくり過ごせなかったからな。明日は病院が終わったら二人でゆっくりしよう。これからのことも決めたりしないといけないからな」
「はい」
優しい腕がしっかりと私を包んで、啄むようなやわらかなキスが降り注ぐ。
「…A…ありがとう。君のおかげで、愛しいものがまた増えそうだ」
「…それは私の台詞ですよ。ありがとうございます、秀一さん」
微笑みあって、口付けて。
その日の夜は、ひどくあたたかな気持ちに包まれながら更けていった。
翌日、秀一さんに付き添われて行った病院で、懐妊の診断をもらい、二人で喜びを分かち合って。
嬉しい報告の連絡を入れた弟妹たちが、喜び勇んでアメリカまですっ飛んできたのは、また別のお話。
fin.
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ぱぱんだ(プロフ) - grenouilleさん» いつもありがとうございます(*^^*)そうなんです、作品数が増えてきて自分でもわからなくなってきて(笑)ついにまとめました(*^^*)これからも可愛い夢主目指して頑張ります! (2018年5月17日 12時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
grenouille(プロフ) - ぱぱんださんの作品は大好きだから全部読んだと思っていたら、今朝、まとめてくださってたので、こちらを見つけられました!花・海シリーズも優男も本当に大好きです!ぱぱんださんの夢主はほんとにかわいいです!忙しいでしょうけど、今の作品も応援してます^ ^ (2018年5月17日 10時) (レス) id: 9364f4193b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 笑顔の似合う少女。さん» 有り難いお言葉ありがとうございます!寂しいだなんて…!頑張ります!(笑) (2018年2月8日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 湯葉さん» ファンだなんてありがとうございます…!そしてリクエストもありがとうございます。例の発信器ですね(笑)かしこまりました!ぜひ、書かせていただきます! (2018年2月8日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
笑顔の似合う少女。(プロフ) - 番外編の続編も悪くないと思います!むしろ、このまま終わっちゃうのは、寂しいです(笑) 続編、作っていただけると嬉しいです! (2018年2月8日 18時) (レス) id: c8e9e68a05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2017年11月11日 11時