花または海のような人【番外編】

【花】ウワサのHoney. ページ17

※続編後日談
※組織壊滅後アメリカに移住



『…A、すまないが本部まで着替えを持ってきてくれないだろうか』

しばらく顔を見ていない旦那様から、そう頼み事の電話がきた。
どうやらまだ、今追っている案件は片付かないらしい。


秀一さんに連れられ、アメリカに移住して早3か月。
英語には苦労しつつも、近所のスーパーやデパートなどの生活圏内の様子にようやく慣れてきた。
私が秀一さんに付いてアメリカへ行くと言ったら、それはもう零ちゃんがうるさくて。
いろいろ言われたが要約すると、彼いわく危機感のない私がアメリカで生活していけるのか、というものだった。

零ちゃんの反応は予想済みだったのか、はたまた彼も同じ思いでいたのか、秀一さんはFBI本部にほど近いワシントンD.C.の一等地の、それこそセキュリティもバッチリなマンションを買い、お抱え運転手まで雇うつもりだというのだから驚愕した。
さすがにお抱え運転手は説得して諦めてもらったものの、お高いマンションはそのままこちらでの住まいとなった。


秀一さんの服や下着類を鞄につめて。
電話越しの憔悴したような声が気になり、差し入れでも持っていこうかとキッチンへ立つ。
毎日電話はくれるものの、もう5日ほど会っていない。
日に日に元気がなくなる電話に、さすがに心配もピークになり、顔を見たくなったところだったから、今回のお使いはちょうどよかった。

FBI本部に行くのは初めてだが、知り合いのジョディさんやキャメルさんもいる。
少し多目に持っていこう、とせっせと煮物やらおにぎりをつめた。
和食が口に合うかわからないが、疲れているだろうから料理は胃に負担の少ないものにして。
疲れた時には甘いもの、の糖分はカップケーキにしよう。
手早く調理を終わらせて、案外大荷物になってしまった包みを抱え、私は自宅を出た。



「あれ？Aさん？」

本部に着いたと、秀一さんに連絡を入れようとした所に見知った顔が通りかかった。

「キャメルさん！」

「どうしたんですか？…あぁ、赤井さんに着替えですか？」

「そうなんです。キャメルさんもずっと泊まり込みですか？」

彼の顔もまた、疲労の色が濃い。

「はは、なかなか手こずってまして…あ、じゃあ自分と行きましょう。赤井さんの所までご案内しますよ」

「ありがとうございます…でも、入っていいんでしょうか？お仕事の邪魔では…」

「大丈夫ですよ。みんな、Aさんに会いたがってますから」

「…私に？」



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