【海】はじまりの日2 ページ15
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「…何やってるの…萩原の仇をとるとか言ってたけど…仇どころか自分が死んじゃったら、だめじゃない…ホント、馬鹿……馬鹿だよ、陣平……」
うつむいたまま、如月はまるで松田に語りかけるかのように言葉を紡いでいく。
「…私だって、警察官だから…気持ちわかるけど…本当は、こんなこと思っちゃいけないのかもしれないけど…でも、それでも…立派じゃなくたっていいから、生きてて欲しかった…」
ついに、ぽたり、と涙がこぼれて。
彼女の気持ちと共に、ぽたり、ぽたりと落ちていく。
「……陣平、いなくなったら…ひとりになっちゃう…家族、いなかったけど…陣平いたから…わたし…っ」
あとはもう、言葉にならなくて。
涙と嗚咽が静かな部屋に響く。
ひとりとか、言うなよ。俺がいるじゃないか。
そう言いたかったけれど、そんな言葉で今の如月を救えるとは到底思えなかった。
本当に、あいつは馬鹿だ。
多くの人間を救っても、大切な幼馴染をこんなにも悲しませて、何をやってるんだ。
そして俺からも、これ以上大切な友人を奪ってくれるなよ。
なぁ、松田。お前は何を思ってあのメールを俺にくれたんだ。
俺は今の彼女を救えるような言葉ひとつ、かけられないでいるのに。
ただただ、涙に揺れる細い肩を抱きしめて。
俺は亡き友人を思って、共に涙を流すことしかできなかった。
「……っ、ふるや……」
ぐすぐすと、泣きながら如月は俺を見上げて。
涙に濡れるターコイズブルーの瞳が、ひどく痛々しい。
「……降谷は、いなくならないで…お願いだから、いなくならないで…」
まるで懇願するかのようにすがり付いて、泣きながら訴える如月をきつく抱きしめる。
「…あぁ、約束する…」
本当は、約束なんかできないのに。
いつだって、死の危険はすぐとなりにあるのに。
それでも。
「大丈夫」
君が泣き止んでくれるなら、嘘つきでもいい。
「…降谷…ふる、ゃ…っ」
ぽろぽろと流れる如月の涙を、何度も拭って。
「…大丈夫。俺は、いなくならないから」
ターコイズブルーの瞳に、引き寄せられるように口づけた。
何度も、何度も。
如月の腕が、受け入れるかのように俺の背に回ったのを合図に、俺たちの体は深くソファに沈んでいった。
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ぱぱんだ(プロフ) - grenouilleさん» いつもありがとうございます(*^^*)そうなんです、作品数が増えてきて自分でもわからなくなってきて(笑)ついにまとめました(*^^*)これからも可愛い夢主目指して頑張ります! (2018年5月17日 12時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
grenouille(プロフ) - ぱぱんださんの作品は大好きだから全部読んだと思っていたら、今朝、まとめてくださってたので、こちらを見つけられました!花・海シリーズも優男も本当に大好きです!ぱぱんださんの夢主はほんとにかわいいです!忙しいでしょうけど、今の作品も応援してます^ ^ (2018年5月17日 10時) (レス) id: 9364f4193b (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 笑顔の似合う少女。さん» 有り難いお言葉ありがとうございます!寂しいだなんて…!頑張ります!(笑) (2018年2月8日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぱんだ(プロフ) - 湯葉さん» ファンだなんてありがとうございます…!そしてリクエストもありがとうございます。例の発信器ですね(笑)かしこまりました!ぜひ、書かせていただきます! (2018年2月8日 18時) (レス) id: 0dfef02039 (このIDを非表示/違反報告)
笑顔の似合う少女。(プロフ) - 番外編の続編も悪くないと思います!むしろ、このまま終わっちゃうのは、寂しいです(笑) 続編、作っていただけると嬉しいです! (2018年2月8日 18時) (レス) id: c8e9e68a05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱぱんだ | 作成日時:2017年11月11日 11時