CRKR 短編夢小説 (ページ27)

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熱愛発覚 5 ページ27

聞き馴染みのある声がした。

あぁ、ついに幻聴まで聞こえてきたのか。
そう思っていると、被っていた毛布がずらされる。

「……泣いてるの。」

…Sellyさんの香りだ。どうやら幻聴では無かったみたい。

これから別れ話をされるのに、大好きな人の匂いと優しい声色に落ち着いてきてしまう自分が嫌になる。

私の顔を覗き込んでいるのだろうか。
ろくに電気も付いていない真っ黒な部屋では
月明かりも頼りなく、Sellyさんがどんな顔をしているのか分からなかった。

ただ分かるのはSellyさんがそばに居ることだけ。

「目、はれてる。」

Sellyさんの親指が私の目元に這わされる。

「ごめん。泣かないで。」

親指が涙を掬うように目元を撫でていく。
その手つきが異様に優しくて、温かくて、辛くて。

きっとこれから別れ話が始まるんだ。
なのに、そんなに優しくしないで。
気のあるようなことしないでよ。

そんなことを思うのに、優しく撫でてくれるその手を振り払うことは、私には出来なかった。

離れて欲しくなくて、Sellyさんの服をぎゅつと掴む。

「…めぐ、聞いて。」

来た。
いやだ、やだよ。

『ぅっ…ふ、やだ、やだぁ……聞きたくない……！』

別れるなんて言わないで。
ずっとそばにいて。

目の前の体にもたれ掛かる。
Sellyさんの肩に頭を預けて、より一層服を強く掴む。

私はズルい女だ。
Sellyさんは優しいから、これを振り払わないことを分かっていて、もたれかかっている。

ずるくて、わがままで、嫌な女。

Sellyの言葉の先を聞きたくなくて、頭を小さく振りながら泣きじゃくる。

あぁ、惨めだな。
自分を捨てる人にこんなふうに縋るなんて。

「めぐ。」

Sellyさんは私の体を剥がし、俯いていた顔を少し上に向かせる。

そうして、私に黒い影が被さった。
唇の柔らかな感触。煙草の少し苦い味。

そして、私をきつく抱きしめるSellyさんの体。

「めぐ、多分違うこと思ってる。だから、俺の話きいて。」

少し体を離したSellyさんは、私を見つめながら言う。