【文スト】女神様は疫病神なんだと。

神様 7 ページ8

突如Aの背後から出てきた1体の巨大な夜叉。

『何これ怖！』

Aは得体の知れない物にガクガク震えていた。対して紅葉と中也は驚きを隠せない表情をしていた。

｢な、何故…"金色夜叉"が……！｣

Aの後ろから出てきたそれは、間違いなく紅葉の異能力、｢金色夜叉｣だった。

｢……！金色夜叉！…っ出ない！？｣

そして何故か本来紅葉の異能である筈の夜叉が出ない。どうやら完全にAに乗り移ってしまったようだ。

夜叉は刀を構える。それを見た途端、Aは自分が襲われると察したのかもしれない。

『う、うわぁぁ！助けて！』

と、叫んだ。

その瞬間、夜叉は凄まじい速度で辺りをめちゃくちゃに切り裂いた。
中也と紅葉は必死に避ける。
Aには刀は当たらない。頭を必死に守り目を開けていないので気づいていないが。

公園の木に潜んでいた十数人の黒服もあっという間に切り裂かれる。そのままマフィアの敵になってしまった夜叉は、本来の能力者である筈の紅葉に狙いを定める。

｢……っ！姐さん下がれ！｣

そのことにいち早く気づいた中也は自分の異能力をフルパワーに発動した。

｢重力操作｣

そう唱え能力が乗っかった拳は夜叉に綺麗にぶち当たる。拳を貰った夜叉はあっという間に消え失せた。

｢何なんだよ一体…はぁ！？彼奴が居ねえぞ！｣

Aはいつの間にか何処かへ消えていた。あの夜叉の中で中也と紅葉が気を取られているうちに脱出したのだろう。

｢どうする姐さん、追いかけますか？｣

中也は問う。紅葉は複雑そうな顔をして地面を見つめる。
それもそうだ。自分の夜叉が自分に攻撃して来た。
幸い、消えた夜叉をもう1度出すと紅葉の元に戻ってくるので、良いと言えば良いのだが…。
紅葉には既に乗っ取られてしまった理由の目星がついていた。


異能力は、消えない傷。

その傷を幸か不幸かに左右させるのは、本人次第。


今回はどちらなのか。
何故夜叉は突然少女に乗り移ったのか。
少女は何故自分のことを不幸だと嘆くのか。
何故自分が異能力者ではないと言ったのか。
結局奴は何者なのか。


｢……さて、帰るぞ｣

｢…わかりました｣


噂より遥かに飛び越したものを目撃してしまった2人は、首領に報告する為夜の闇に消えていった。

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