神様 30 ページ31
『立場を変える…って、具体的には』
Aは鷗外に問うた。鷗外はそれを聞き、静かに、そしてはっきりと云う。
「君は普通の女子高生だ、そうだろう?自分の立場が女子高生でなければ…否、正確には、"女子高生という立場を変えてあげれば"、君自身の人生も変わるとは思わないかい?」
そこまで聞いて、漸くAは理解出来た。
つまりは、「この女子高生という立場は今のAが立つべき場所ではない」ということである。
その考えは、Aにとっては考えた事も無いようなものだった。画期的であり、論理的。諦めかけていた人生に、一筋の光が入る気がした。
『でも、変えることなんて…出来るかどうか』
「さっき私はこう云った筈だ、"君にお礼がしたい"…とね?少々荒事が多いが…君なら確実に名声が手に入れられる。君のその計り知れない力もね」
Aははっきり分かった。この人は黒だ、と。
A持ち前の勘が訴えている。
この前思っていたこと。この人の元へは行っては駄目。
行っては確実に…。
その時Aの眼には、2人を挟んだテーブルと座っている椅子。それ以外の周りの景色は全て黒い世界が広がっていた。
Aは、今目の前に居る鷗外から遠い遠い距離にいる気がした。だがしかし、その距離を鷗外が縮める。鷗外の隣にいるエリスがにっこりと、でも何処が妖しげに微笑む。
これ以上迷惑を掛けてはいけない。
Aは椅子から立ち、ゆっくりと歩いていった。
だがその歩いている道は沼で出来ていて、Aの足をズブズブと引きずり込む。まるで鷗外の元へは行ってはいけないと止めるように。
それでもAは歩くのをやめなかった。
頭で否定しても、体が勝手に動く。それは操り人形のようだった。
それくらいAは、この人生に終止符を打ちたかった。変えたかった。
「どうかね?」
鷗外は問う。
Aにはもう、拒否権は残されていなかった。
呼吸が荒くなる。
瞳孔が震える。冷や汗が出る。
全てが分からなくなる。
Aは、覚悟を決めた。否、決めざるを得なかった。もう何でもいいじゃないか。
そう思い口を開け、『変えたい』と言いかけた時。
「おや?A?」
個室のドアがいつの間に開けられ、中に初老の男性が入ってきた。
黒服達が一斉に銃を向ける。だが男性はそれに驚きも怯えもしなかった。
個室の空気の中は、こいつ誰だよという雰囲気で満たされていた。
ただ1人除いては。
『……虚言爺ちゃん?』
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彩りパスタ@しばらく読み専(プロフ) - 橙咲智歌さん» コメントありがとうございます!賢治くんには出会うのでしょうか、何処までが真実か分からない人ですからね・・・コメントでもボードでも仲良くして下さりありがとうございます! (2018年4月28日 12時) (レス) id: 1634f08530 (このIDを非表示/違反報告)
橙咲智歌(プロフ) - 読み終わって「はあぁぁぁぁ…」と感嘆の声を漏らしてしまいました!迚も世界観に引き込まれて面白かったです!夢主がラスボスだった事実…ひょえぇ…最後の最後にどんでん返しが来るとは思ってませんでした!イーハトーヴォ村…帰省した賢治くんとの遭遇フラグ…?← (2018年4月28日 10時) (レス) id: e71731f15b (このIDを非表示/違反報告)
彩りパスタ@しばらく読み専(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!ラストがお好みに添えていれば良いのですが・・・ (2018年4月27日 23時) (レス) id: 1634f08530 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです(≧∀≦)続きが、すごく気になります(≧∀≦)これからも、頑張って下さい(≧∀≦) (2018年3月31日 9時) (レス) id: 5050a4539b (このIDを非表示/違反報告)
すーしー。(プロフ) - 彩りパスタさん» いえいえ。イラスト楽しみにしています〜 (2018年3月9日 21時) (レス) id: 4e9f960f28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩りパスタ | 作成日時:2018年2月15日 19時