神様 28 ページ29
大富豪がこぞって利用する横浜でも指折りのホテル。その最上階に位置する予約が全く取れないレストラン。
そんな中でのレストランのと或る広すぎる個室。
「上品に食べるねぇ、テーブルマナーがなってる」
そのテーブルの一角に、Aは状況が理解出来ぬまま椅子に気が抜けたように座っていた。
Aの目の前には上品に盛られた料理の皿が幾つもある。キャビアにトリュフにフォアグラ…しかしそれは平民のAにとってどれも理解し難い味だった。本音を言えば今凄くコンビニの肉まんが食べたい。
そんなAの向かい側に座っている中年男性―――森鷗外は、廃人になっているAを見て苦笑した。
部屋の周りにはびっしりと黒服が見張っている。
その中には先程の2人―――中也と紅葉もいた。
この状況がわかる人が居れば、中々ビックな光景なのだが、Aにとっては事の大きさが分からないに等しかった。
「いきなり済まなかったねぇ。でも私はただ君にお礼を言いたかっただけなのだよ」
と、鷗外は困ったように微笑む。
『いや……私…なに…もしてない…ですけど……』
Aは灰になりながらも状況を理解しようと頑張り答えた。
あの後、Aはここじゃなんだと言われ、お礼をしたいと言われ、半強制的に黒塗りの車に乗せられ、異様な光景に死にかけつつも墓に入りかけつつもなんとかここまで来た感じだった。
「何もしてなくなんかないさ。大切な私の部下と、エリスちゃんを助けてくれたのだからね。まあ中也君の方は咄嗟だったとはいえどもね」
『え、あの時貴方いましたっけ』
「中也君から報告で聞いたよ」
そう云い鷗外がねぇ?と問いを投げかける。
Aが中也に顔を向けると、中也は目を逸らして云った。
「手前に助けてもらうほどの柔じゃねえけどな」
『いや、完全に死にますってあれは』
「だからって手前が死んでいいって訳でもねェだろ莫迦が」
『莫迦が…?!莫迦がと言われた……?!』
鷗外が中也君と宥めると中也は黙った。
一方Aは久しぶりに言われた暴言にショックを受けている。だが、心の何処かでこの中也さんって人は優しいんだなと思ってしまった。
鷗外はAの心中を察し、ケラケラと笑った。
ひとしきり笑った後、鷗外はさて、と話題を変えた。
「君は、闇の世界を知っているかい?」
Aはその質問の意味が理解出来なかった。
Aのテーブルのグラスの氷がカラン、と優雅な音を立てた。
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彩りパスタ@しばらく読み専(プロフ) - 橙咲智歌さん» コメントありがとうございます!賢治くんには出会うのでしょうか、何処までが真実か分からない人ですからね・・・コメントでもボードでも仲良くして下さりありがとうございます! (2018年4月28日 12時) (レス) id: 1634f08530 (このIDを非表示/違反報告)
橙咲智歌(プロフ) - 読み終わって「はあぁぁぁぁ…」と感嘆の声を漏らしてしまいました!迚も世界観に引き込まれて面白かったです!夢主がラスボスだった事実…ひょえぇ…最後の最後にどんでん返しが来るとは思ってませんでした!イーハトーヴォ村…帰省した賢治くんとの遭遇フラグ…?← (2018年4月28日 10時) (レス) id: e71731f15b (このIDを非表示/違反報告)
彩りパスタ@しばらく読み専(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!ラストがお好みに添えていれば良いのですが・・・ (2018年4月27日 23時) (レス) id: 1634f08530 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです(≧∀≦)続きが、すごく気になります(≧∀≦)これからも、頑張って下さい(≧∀≦) (2018年3月31日 9時) (レス) id: 5050a4539b (このIDを非表示/違反報告)
すーしー。(プロフ) - 彩りパスタさん» いえいえ。イラスト楽しみにしています〜 (2018年3月9日 21時) (レス) id: 4e9f960f28 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彩りパスタ | 作成日時:2018年2月15日 19時