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黄side
赤「あ、淳太!」
慌てて外へ出てみれば、薄桜の色をした浴衣姿のしげが待っていた。
黄「え、…?」
今日花火の予定よな?
浴衣は晩夏の日やなかったっけ…?
俺が黙りこくっていたからか、少し恥ずかしそうにしげが口を開く。
赤「淳太が言ったんやん…、俺の浴衣姿、見たいって…」
俺が前、浴衣の話をしたから?
黄「俺の、ために…?」
薄桜の浴衣に臙脂の帯が映え、筋の通った鎖骨がちらりと顔を見せているせいかいつもより色っぽい。
赤「も、恥ずいって…」
ジロジロ見んな、と片手で顔を隠すもんやから、その手を取って 指を絡ませる。
黄「似合っとる、ありがとう…」
赤「っ…、おん…、い、行こ?」
暗がりでも分かるほど、照れている彼は 繋いだ手を離すことなく そのまま手を引いて歩き出した。
手を繋ぐことは嫌やないんや、と 心の中でほっとする。
もしかして、と期待してしまう。
そんな期待、当てにせんほうがええのに…。
時間よりも早く 桟橋に着くと、橋にも垂れながら何気ないことを 2人で話す。
夜の海は少し怖い。
真っ暗で 落ちてしまえば吸い込まれそうで。
それでも、しげと2人きり。
静かな波の音が心地よくて このまま夜が続けばいいと そう思った。
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作者名:おかゆ。 | 作成日時:2020年7月16日 19時