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Tatsuya





「蓮〜入るよ。ちょっと話あるから。」





相変わらず俺が部屋に入ると、こっちに背中向けて寝てる蓮。



一応今も面会拒否してるけど、今日は必要なことだから。





最低限話しかけても黙ったままで、事故から一言も声を聴いていない。



返事は無くても、一応聞いてはいるみたいだけどね。





リハビリの先生からも、嫌がってる訳じゃないけど何だか無気力な感じで、


やる意味を見出せないみたいって聞いた。



ほんとは凄く頑張り屋さんなはずだから、又少し前向きに頑張れると良いんだけど。








.








「蓮、翔太が会いたがってるからさ。顔見せてあげて欲しいんだけど。」






翔太の病状は変わらずあんまり良くなくて。




でも会いに行くと、熱で辛そうなのに、


うわ言みたいに蓮に会いたいって。





事故の後、一回も姿見れてないから心配してんだよな…



単純に弱ってるときに家族に会いたいっていうのも多分あるけど。






「翔太さ、今ちょっとしんどくて病室から出らんないんだ。車椅子押すから一緒に行かない?」





背中に向かって話しかけると、ちょっとモゾモゾ。



多分蓮なりに悩んでんだろ。





心的にはまだぐっちゃぐちゃだし、俺達に会いたくないって言ってる手前出て来づらいけど、



翔太のことは心配だし、会いたがってるならって気持ちも多分ある。






「翔太、顔見て安心したら元気になるかもしんないから。行かない?」




最後にちょっとダメ押し的に一言言ったら、


んってゆっくり起き上がる蓮。



内心蓮なら絶対来てくれると思ってたけどね。





「ゆっくりでいいから。こっち側支えるから座って。」




言葉は無いけど、不器用にぐらぐらしながら一生懸命車椅子に移動して、






色々喋りかけながら翔太の所に向かう。





誰かとすれ違う度、蓮の足を見て二度見してくる人もいて、




その視線が俺達に突き刺さる。





何にも悪い事してないんだから、堂々としてて良いはずなんだけど、





やっぱり気になる周りの目。






「気にしないの。大丈夫だから。」





ありきたりなことしか言えないけど、こればっかりは蓮が最終的に自分で乗り越えるしかない。





いくらでも支えるけど、同情されるのは嫌だろうし、




当事者にしか分からない気持ちがあるから。





皆それぞれ抱えてるものが多い俺達兄弟でも、辛さを全部分かってあげることは出来ないからね。

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作者名:りる | 作成日時:2021年7月11日 19時

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