dear for you. (ページ26)

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Ryohei

辰「本当に本当に楽しかった。きっとさ、、、」

これで良かったんだと思う。

微かに目を潤ませながら、でもはっきり前を向いて言ってくれたふっか。

俺も沢山の思い出と笑顔の翔太を見てそう思ったよ。

辰「入院してた頃はさ、俺後悔しかしなかったの。

なんで病気気付いてあげられなかったんだろうとか、もっと早く病院連れてけば良かったって。

翔太じゃなくて俺が病気になれば良かったって本気で思ったし、自分達が一番不幸だと思ってた。」

何度も何度も思い詰めてぼろぼろ泣いて、

先の見えない治療に翔太だけじゃなく、ふっかも多分ご家族皆も限界だったんだと思う。

それ位本当に苦しい毎日だった。

辰「でも帰ってきてからは、出来ないことじゃなくて今出来ること考えられる様になった。

ちび達は本当に分かってなかったけど多分翔太と涼太は俺達が嘘ついてんの気付いてたんだろうなって。

でも余命のことはずっと黙ってたから…だからなのかな……

最期まで、前向いていられたと思う。」

阿「それなら良かった。翔太本当に強かったね……」

結果的に余命より三ヶ月近くも長く生き抜いた翔太。

高熱に魘される夜も、もうたった一人で闘うことは無くて皆が一緒にいてくれて、

直前まで笑顔で卒業式に出れたんだって。

医者として病気を治してあげられなかったことは本当に申し訳ない気持ちで一杯だけど、

俺にもこれ以上の正解が見つけられなかった。

一緒にお酒飲みたかった、高校の卒業式も成人式も結婚式も見届けたかった、もっと生きていて欲しかったって、

やりたいことは一杯あったけど翔太が精一杯頑張って生き抜いてくれたからってふっかも言ってくれたし。

辰「ほんとにありがとう。俺達阿部ちゃんにはほんっとに感謝してるから。」

何にもしてあげられなかった俺に、ふっかは一杯ありがとうって言ってくれて、

笑顔で、前を向いて弟君達のいる家に帰っていった。

少し前まで、ほぼ毎日ここに来て会っていたけど、

もうふっかと会うことも少なくなるんだろう。

次は友達として一緒に飲みにでも行って、翔太との思い出話しも家族のことも一杯聞かせてね。

ずっと翔太を支えて来た白い手を振りながら病院を後にしたふっかを見送ったら、

前を向いて歩き出した皆の背中を押すみたいに、桜の花がふわっと舞った。

fin.