dear for you. (ページ16)

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Ryohei

ふっかの家は親のいない6人兄弟で、翔太は3番目。

小児科病棟は面会制限が厳しくて、一度入院してしまうと小さい弟君達には会えなくなるし、

病気になるまでずっと一緒だった双子の片割れ君とも離れ離れになってテレビ電話位しか出来なかった。

治療で無菌室に入れば、ふっか達とも分厚い透明のカーテンとガラス越しになって家族とは直接会えなくて、

一人ぼっちの病室で沢山苦しい思いをした翔太。

病院で出来る治療が無くなった時には、

家に連れて帰って兄弟皆と一緒に過ごさせてあげたい。

そんな翔太を目の当たりにしてきたふっかからそう相談されたのはずっと前からだった。

辰「翔太には、病気は治ったって言って欲しい。治ったから帰れるって。弟達にもそう言うから。」

阿「うん、分かった。」

今までは治療のこと、再発のことは全部翔太に包み隠さず話してきたし、

中学生なら多少なりとも自分のことを分かってると思う。

それでもふっかと大介は二人で一杯一杯悩んで、

翔太にも弟君達にも、最期は伝えないことを選んだ。

本当は良くないことなのかもしれないけど、翔太にこれ以上怖い思いをさせたくないってご家族が決めたこと。

もう医者としてしてあげられる治療が無い以上、

俺も人としてご家族や翔太の気持ちに寄り添うことしか出来なかった。

辰「悪いんだけど、阿部ちゃんから翔太に言ってあげて。俺泣かないで言える自信無いの。もう顔見ただけで…」

阿「うん。俺から話すね。本当に良いんだよね?」

辰「ん、お願いします。」

もう迷い無くふっかが頭を下げたから、

俺は二人と相談したそのままを全部翔太に伝えた。

阿「翔太、来週退院!お家帰れるよ。よく頑張りました!」

翔「えっほんと!?マジで、、、」

阿「うん、翔太一杯頑張ったから。もうこの間の検査で悪いのが無くなってたの。病気治ったよ。」

見るからに手放しで喜んでない翔太には、

もしかしたらもう俺の下手過ぎる嘘はばれてたのかな。

それでも嬉しいって笑ってくれた翔太に心が痛みながら、周りの看護士と一緒に無理矢理盛り上げてお祝いした。

病気は治ったなんて、無力な俺が自分に言い聞かせたいだけかもしれない様なこと。

先生ありがとう!って何にも出来ない俺に笑ってくれた翔太の顔を、正面から見られなかった。