最期の時間を一緒に ページ15
Ryohei
「翔太、退院おめでとう〜!!!」
病院の皆に見送られて、照れ臭そうに笑っている翔太。
翔「ふはっ、先生ありがと。じゃあね。」
辰「阿部ちゃんお世話になりました。ありがとね。」
ふっかと目が合うと思わず込み上げるものがあって、
胸の奥がきゅっとする。
阿「うん、おめでとう。よく頑張りました!」
ふっかの色白の手に支えながら花束を持って笑顔で外の世界に歩きだしていった翔太を見送った時、
俺はちゃんと、笑えてたかな。
.
阿「出来ることは全部やりました。残念だけど……」
かつての高校の同級生とその弟の大介に、そんな残酷な宣告をしたのは、
つい1週間前、世間も病棟もハロウィン前で賑わっていた頃のことでした。
三年前の夏、中学初めての夏休みを目前に、
突然血液のがん、白血病を発症したふっかの弟の翔太。
すぐに入院をして、治療一色の中学生活を過ごして、
今日まで一杯一杯頑張ってきた。
副作用で髪の毛は全部抜けて、無菌室でたった一人何も食べられない程の吐き気とも戦い続けて、
一度命が尽きかけたこともあったけど、何とか食らいついて文字通り必死に耐えてきたんだ。
なのに現実は惨いもの、何度か寛解には辿り着いたもののすぐに再発を繰り返して、
その度に病気は凄まじい勢いで翔太を蝕んでいった。
そして、今回も又。
辰「なんでっ…なんで翔太がっ……」
一縷の望みに賭けた抗がん剤と移植の結果は、再発。
そして翔太の体はもう、
これ以上の強い治療には耐えられなくなっていた。
手を尽くして、やれるだけのことはやったけれど、
残ってしまったのは未来ある中学生には残酷過ぎる結果。
阿「恐らく年内一杯。年は越せないと思っていて欲しい」
余命宣告なんて、本当は俺だってしたくなくて、
医者として、無力感しか感じなかった。
ふっかが目の前で見てられない位泣き崩れて、
隣に座る大介も背中擦る手が震えてる。
本当に本当に皆苦しかったけど、
でもこの宣告も翔太とご家族のこれからの為。
阿「退院で、良いんだよね?」
辰「んっ、ありがとう……」
今回の治療で成果がでなければ、家に帰る。
二人と相談して、移植の前から決めていたことだった。
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作者名：りる | 作成日時：2022年11月27日 21時
