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Tatsuya
辰「とりあえず今日はお祝いしよ。誕生日も退院も、ケーキ買ってきたから皆で食べようね。」
黙って降りてきてくれた涼太の方が、俺よりきっとずっと大人だったけど、
でも今日皆でお祝いしたかったのは本当のこと。
10月末に宣告を受けてから、最期の誕生日になるならその日までに帰らせてあげたいって、
阿部ちゃんにお願いして一週間で帰ってきたんだから。
辰「翔太、涼太。誕生日おめでとう!翔太は退院もね。」
双子が揃って向かえられた3年ぶりの誕生日。
食事制限も出来るだけもう無しにしてあげようって、翔太も一緒に生クリーム一杯のケーキ囲んで、
康二と蓮もにこにこしてて嬉しそう。
翔「んっ、旨い。ありがと!」
辰「良かった良かった、翔太俺の苺一個あげるよ。涼太も美味しい?」
涼「うん、美味しい。ありがと。」
今だけ無理矢理取り繕ってるだけなんだけど、
でもこういうことも今まで出来なかったから。
家族皆で同じもの食べて直接会って一緒に過ごせるって時間を一人、甘いケーキと一緒に噛み締めていた。
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翔太残しちゃうかなって思ってたけど、ご飯もケーキ取り分けた分も全部食べられて、
病院食の時は中々食べれないこともあったから良かった。
でもやっぱり少し疲れたのもあったのか、少ししてこほこほ咳しだして微熱が少し上がってきて。
辰「胸痛いね。お水飲んで深呼吸しな。」
翔「んっ……けほっ、けほっ、、、っぃたっ………」
咳をする度に痛そうに胸を抑える翔太。
実は半年前、治療期間中に無菌室で容態が急激に悪化したことがあって、
その時に翔太は一時心肺停止状態に陥った。
すぐに阿部ちゃん達が蘇生処置してくれて一命を取り留めたものの、心臓マッサージで肋骨が折れてしまってから、
治癒力も少なくなってしまったせいで未だに骨折が治ってなくて、咳すると酷く痛むらしい。
でも思えば、最期は家に連れて帰ってあげたいって思ったのはあの時のこと。
俺の目の前で翔太の心臓が止まったあの時、
分厚いガラス越しにぐったりした翔太を見てるだけで、側にいることも許されなかった。
それに闘病中何度も家に帰りたいって翔太が泣いてたことも知ってたから、
このまま帰れなくなるなんてことに絶対したくない。
そう思って決めたことだけど、
まだどこか、自分の中に迷いがあった。
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作者名：りる | 作成日時：2022年11月27日 21時
