其の料理人は唐突に 拾捌【食戟のソーマ】

貴「456話目だよ」 ページ13

―――

白星を獲った後、そのままA達の元へ戻る黒木場。



「よし！これで1勝出来たぞ！」

タクミの元気な声とともに、士気の高まる叛逆者サイド。



「…A」

「どうしたのリョウ」




















「俺だけ見てろって言っただろ」



「…ぅえ!?」



突如、Aの元へ歩み寄り、抱きしめた黒木場。

身長差のあまり、彼女はすっぽり埋まってしまった。




「まだ怒ってたの？」

「……」

「物理的に無理って言ったじゃん…」


「…うるせぇ。いいからこうさせろ」

「……うん」





困ったように、そして恥ずかしそうに視線を動かすA。このような経験はどうやら初めてのようだ。

まさにピュアとはこの事である。








黒木場は、楠に嫉妬していた。
彼女の言葉が楠に向くのが悔しかったのだ。




「あ、あの…さ」


そんな黒木場にAは、彼にしか聞こえない小さな声で声を掛ける。

























「……かっこよかった」





「…!!」




そして、さり気なく黒木場を抱きしめ返した。
若干覚束無いものだったが、彼にとっては何よりも嬉しい返事だった。






―――














突然、パチパチと乾いた拍手が会場内に響き渡る。





「いい勝負だったね」








そこに現れたのは、現総帥である薙切薊。







シリアスモードに移行したのは分かったが、正直に言うとタイミングが悪すぎる。

これには機関側の生徒達も密かに思った。












頼むから今はあの2人(黒木場とA)の邪魔をしないでくれ!!











しかし何かと容赦のない薊は何事も無いように話を始めた。


勿論、2人はパッと離れる。シリアス移行準備は完了したようだ。






「楠くん。全勝するようにと…そう言った筈だが」


光のない瞳が楠を捉える。


「で、でもでも総帥！連ちゃんだって1勝はしたんですよぉ！そこも汲み取って貰えたらな〜って」


メアの助け舟も虚しく、薊のあの目線に一蹴された。


「…何でもないですぅ……アハハハ…」




ところで……機関側は、4箇所で行われた計33戦の食戟のうち、32勝1敗という圧勝を飾った。

しかし薊は32勝なんて求めていない。彼が求めていたのは、33勝。


つまり、完全勝利。












アリスと薊が対峙する。



「……薊叔父様。お久しぶりですわね……」



「…やぁアリス。えりなが世話になったようだね」


冷静な様子を見せるも、互いに睨み合いが続く──

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