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高校3年の7月。
梅雨が明けて、夏本番までもう少しという時期。
いつもより塾を出るのが遅くなった帰り道、駅に向かって街を歩いていると、バス停に立つA先生を見つけた。
先生が塾を辞めてから、もうすぐ1年が経とうとしていた。
「先生！」
「…え、きりやん君？こんな時間に学生が出歩いちゃダメだよ…って言いたいところだけど、そっか。ここ塾の近くだもんね。」
「ちょうど、今帰りです。」
「もう高校3年生だっけ？受験だもんねぇ。」
A先生はスーツ姿で、少し疲れているように見えた。
「元気ですか。」
「…うん、まぁね。へへ、なんか懐かしいなぁ。」
バスを待つ間だけでも、と隣に並ぶと、A先生の目から、涙が頬を伝った。
「え、」
「わ、ちょっと待って…ちょっとだけ見ないでね…。あ〜、あはは、もう…。」
「…どうしたんですか、先生。」
顔を逸らそうとする先生の肩に手を添えると、先生は笑いながら泣いた。
もう先生じゃないよ、と、くしゃくしゃの顔で言う姿に胸が痛む。
「仕事がね、始めたばっかりで上手くいかなくて…。ミスが重なっちゃって落ち込んでたんだ。」
「そうだったんですか…。」
「きりやん君が先生なんて呼ぶから、私、懐かしくなっちゃったよ。戻りたいなぁなんて言っても無理なのにね。」
「戻ってくれば良いじゃないですか。」
「あはは、ありがとう。でも、今の仕事は私がやりたいと思ってたことだから、まだ頑張るよ。」
目を腫らしても、まだ俺の前で笑顔でいようとする先生を見ていられなかった。
せめて、どうか、俺の前でだけは、そんな顔しないで欲しい。
自分の中にある勇気を最大限に振り絞って抱きしめた。
緊張で手が震えてる。
「俺は、先生が大変な時に一番近くにいたいです。」
「ちょっと、きりやん君…ここ外だよ。」
「だから、泣かないでとは言わないから、無理に笑わないでください。」
「きりやん君、」
「泣かせないとか、毎日笑わせるとか、そんな確証のないことは言えないけど。俺じゃダメですか。俺、先生のことが好きです。初めて会った時から、ずっと好きです。5つも下じゃ、ガキにしか見えませんか。」
「待って、きりやん君。」
体を押されて、先生との距離が空く。
先生は、もう泣いていなかった。
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岡崎にちか(プロフ) - まどかさん» ありがとうございますー！今作も楽しんで頂けたら嬉しいです！！ (2022年3月8日 16時) (
レス) id: d9673fffe2 (このIDを非表示/違反報告)
まどか(プロフ) - 短編集きちゃ〜！！めっちゃ更新楽しみにしてます、これからも頑張ってください！！！ (2022年3月7日 18時) (レス) id: 068cc2a151 (このIDを非表示/違反報告)
岡崎にちか(プロフ) - Bearlさん» ありがとうございます！！頑張ります！ (2022年3月6日 16時) (レス) id: d9673fffe2 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - めっちゃ好きです…！これからも更新頑張ってください！応援しています！ (2022年3月6日 10時) (レス) @page2 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：岡崎にちか | 作成日時：2022年3月5日 23時
