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そういえば、名前知らなかった。
俺もハッとして名前を言い、なぜか友人から呼ばれているあだ名がスマイルであることも伝えてしまった。
彼女にしてみれば、知ったこっちゃない話だろう。
しかし、彼女はあだ名の方を気に入ったようだった。
「私もスマイルさんって呼んで良いですか?」
「いいけど…というか、Aさんは学生なんですか?」
「はい。今1年生で、この前19歳になりました。」
「19……。俺は大学3年。今年21になる。」
「あっ、年上…ってことは、全然タメ口で良いですよ。」
「そう。わかった。」
屋外のベンチに腰掛けて、そのまましばらく話した。
図書館でたまたま会っただけの、しかも異性で年下の知り合いができるなんて思ってもみなかったが、意外にも彼女と話すのは楽しかった。
小動物が好きだとか、綺麗なものや良い香りのするものが好きだとか。
大学の勉強が大変だとか、サークルが楽しいだとか。
かなり後になって知ったことだが、学部こそ違えど同じ大学だったらしい。
目のことも話していた。
彼女は生まれつき目が悪いらしく、教科書などの本の文字はギリギリまで顔を近付けないとはっきり読めないし、人の顔や景色もぼんやりとしか見えていないらしい。
普通に隣に座る距離だと、輪郭がなんとなく見えて顔のパーツの位置がなんとかわかる程度だとか。
大学まで行ったのは良いものの、教授の話や授業の内容のほとんどは必死に耳から学んでいるらしい。
「手術とかしないの。」
「あ〜、私も治せるなら絶対した方が良いって思うんですけど、ちょっと怖くて。」
「確かに。目は怖いな。」
「小学校からずっと、席替えも一番前の席にしてもらってました。」
「あぁ、俺のクラスにもいた。流石に君ほどじゃなかっただろうけど。」
気付けば話し込んでしまっていて、彼女は午後の講義があるからと大学に戻っていった。
去り際、「来週もここに来てます」と言い残して。
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岡崎にちか(プロフ) - まどかさん» ありがとうございますー!今作も楽しんで頂けたら嬉しいです!! (2022年3月8日 16時) (レス) id: d9673fffe2 (このIDを非表示/違反報告)
まどか(プロフ) - 短編集きちゃ〜!!めっちゃ更新楽しみにしてます、これからも頑張ってください!!! (2022年3月7日 18時) (レス) id: 068cc2a151 (このIDを非表示/違反報告)
岡崎にちか(プロフ) - Bearlさん» ありがとうございます!!頑張ります! (2022年3月6日 16時) (レス) id: d9673fffe2 (このIDを非表示/違反報告)
Bearl - めっちゃ好きです…!これからも更新頑張ってください!応援しています! (2022年3月6日 10時) (レス) @page2 id: cd9603c5df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:岡崎にちか | 作成日時:2022年3月5日 23時