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ビュッと風が通りぬける
三島駅のホームに対峙する青と黒はお互いに睨み合ったまま啖呵を切っていた
「駅のホームなら先公にも見つからねー、カタ着けようぜ今井」
「望むところだ!今までのお前への怨み晴らしてやるぜ」
「そんな時間ねーぞ…」
威嚇し合う2人と呆れる伊藤くん
三島駅に新幹線が止まっている時間は数分だけだ
ましてや置いていかれたりなんてすれば切符を持っていない俺達は次に乗れたとしても降りることはできない。車内でぬくぬくと過ごす筈だったのに無理やり引っ張ってこられてしまい多少ら恨みつつも、この2人の行く末を見届ける事を覚悟した。
「どっち勝つと思う」
「今井さんに決まってますよ」「三橋は負けないよ」
「どっちも相棒想いだねぇ」
パンチやキックを何度も繰り出すがすばしっこく動く三橋には当たらず空振りするばかり
ポケットに手を入れたまま悠然と避ける三橋にイラつく今井くんが煽るが、ふと動きが止まった
…今井くん、お前が考え出したら負けるぞ
「どーした、こいや!」
発車を知らせるアラームがなり響き三橋が一歩車両へと後ずさりながら近づく
「来ねーならこっちから行ってやんぜ!」
ポケットから手を出し握り込んだ三橋が今井くんへと走って向かい殴りかかった瞬間、合わさるようにしゃがみ避けた今井くんが走り傍観していた俺たちの方へ向かってくる
「走れ谷川!」
「えっちょっ!?今井さぁん?」
腕を引かれて連れていかれた谷川くん
今井くんが飛び乗った後、1テンポ遅れてドアが閉まる。覗くとガラスの向こうではやったやった!と喜ぶ今井くんの姿、直ぐにこちらを見やると口をパクパク動かしながら変顔をして煽ってきていた
「…あーあ」
そのままゆっくりと動き出した列車はスピードを徐々に上げ東京方面へとあっという間に消えて見えなくなってしまった
残された俺たちはぼんやりとその場に立ち尽くす
「ちょっとあの列車に乗り込むフリしただけだぞ…」
自分がふざけてやった事とはいえ、少ない良心に響いたのかバツの悪そうな顔をした三橋が俺たちへ言い訳を並べ始めた
「かわいそーじゃねーか、ちょっと…」
「そもそも自分が乗ったのとは逆だと気づかないもんかな」
「…本物のバカだ、今井は」
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作成日時:2019年10月4日 23時