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放課後、伊藤くんはさっさと帰ってしまったうえに赤坂さんはお友達と修学旅行に持っていく服を買いに行くと出かけてしまったため三橋と2人になった。
不機嫌な三橋は誰に喧嘩を吹っかけるかわからないから2人だけってのは正直嫌なんだけどなー、なんて思いながらも赤坂さんの悲しんでいた顔を思い出しその考えを振り払う
「なー三橋、本当に行かねーの？」
「行かねーったら行かねーの！」
仏頂面で言う三橋は、いーっと歯を見せながら威嚇するように振り返った
「京都の景色綺麗だぜ？」
「千葉にも紅葉はあるし学校に生えとる木も赤くなる」
「そーだけどさ」
そうじゃねぇんだよな、風情ってもんがないのかコイツには。何とかいいところを言って興味を引けないものかと頭を捻る
「なんで必死に誘うんだヨ、リコと楽しんでくりゃいいじゃねーか」
「うーん…俺、三橋と行きてーしなァ」
そう、俺は景色を見たりするのも好きだがそれよりも旅行というものを友達と楽しみたいのだ
自分でもしっくりきた返答に満足し、歩いていたのだが三橋がいつまで経っても来ないので振り返る
「何やってんだヨー」
「俺はなA」
「…近いんデスケド？」
急に迫ってきたかと思うと頭突きでも食らわせにきたのかと言うほど顔を近づけメンチを切る
「あのジジイが行く限り行かねー！」
結局頭突きするのかよ、という言葉は痛みのせいで出なかった。暫く痛みで唸りながら額を抑える
佐々木の野郎がいる限り絶対に行かん、と地団駄を踏み叫ぶ三橋
「じゃあ三橋は佐々木に負けて旅行を諦めるんだな」
「！なんで俺様があんな奴のために折角の旅行を諦めんといけないのじゃ…アイツさえ来なければ…」
なんかいい感じに誘導できてるっぽい
俯きブツブツ呟く三橋の耳元に口を寄せ小声で囁く
「そーだよ三橋くん、佐々木さえいなければ君は京都に行けるんだ…」
悪魔の囁きってこんな感じなのかなー
佐々木がいなければ〜と何度か囁くと段々とやる気に満ち始める三橋はついに元気よく背を伸ばし爛々とした目をしながら顔を上げた
「よぉし、今からAン家で作戦会議だ」
「げっ」
「言い出したのはテメーだろ、ほら行くべ」
まぁいいか、行く気になったみたいだし
随分と先まで進んだ三橋へそっちじゃねーよと叫びながら帰る放課後はやけに楽しかった
.
「そういえば、伊藤はどーすんだヨ」
「あぁ伊藤くんは来るよ。彼女さんに頼んだから」
今頃は電話で仲良くイチャついてる頃でしょうよ
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作成日時：2019年10月4日 23時
