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「このボタン長押しで走りますよ」
「こうかしら」
楽しいわねーとゲームに夢中になっているお母様と妹ちゃん。操作が分からなくなると三橋が教え、俺はそれをただのんびりと見て過ごすことしか出来ない
時間が経つにつれてズルズルとずれ、現在は足の間に座り寛いで凭れている三橋のせいで立ち上がることもできずにいた。
和夫くん本当にごめんネ
「Aちゃんお菓子」
「はいはい」
がぱっと口を開け鳥の雛のように与えられるのを待つ三橋の口元へケーキをひと口大にし持って行くと、もぐもぐと美味しそうに食べた
偶に金属のフォークをカチカチ噛むのは癖なんだろうか
ぼけっとしているとフォークが少しズレてしまったようで口の端に生クリームをつけてしまった
制服汚されたらたまったもんじゃない
親指で綺麗に拭って手についたそれを舐める、うま！やっぱり上物のケーキなんだろうな甘ったるいなんてことはなく程よい甘みが口いっぱいに広がって溶ける
「な、にしてんだよ」
「？何が」
「……なんでもない」
そっぽを向いてまたゲームへ参加する三橋はなぜか不機嫌だった。
何考えるか全然わかんねー奴だな
だんだんと上達してきた妹ちゃんがついに三橋を倒したところで、玄関先からただいまという声が聞こえドスドスと足音が近づいてくる
バンッと乱暴に開け放たれたドアの先にはぜぇはぁと肩で息をしながら帰ってきた伊藤くん
「何してんだ人ンチで！！」
「あらあら真司さんおかえりなさい」
「お邪魔してまーす」
「遅かったなテメー」
俺たちを無視し、垂れる汗を袖口で拭い自分の母へと詰め寄る伊藤くんは必死そのもの
和気藹々とゲームをする三人に眉をヒクヒクと動かし怒り爆発寸前という感じだ
「…あれ、和夫くんは？」
「三橋に捕まって外にいる」
「ばーか、あれは特訓しとるんだ」
それを聞いた伊藤くんは走って庭へと飛び出した。俺も外に出ようと立ち上がるために足へ力を込めるが、三橋がさらに体重を乗せてきたせいで床へと寝転ぶ形になってしまった。
「重い、何で寄っかかってくるんだ！」
「ちょーどいいんだよ」
何がだよと聞こうとした時、伊藤くんの怒った声が聞こえた。
特訓だなんていってロクなことしてねーんだろうなあ
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作成日時：2019年10月4日 23時
