異世界のあなたに恋をした。 ページ25
ある日突然、異世界に召喚された。
白い光に包まれ目を開けるとそこは知らない世界が広がっていた。
どうしてこんなところに居るのか解らなくて、此処が何処なのかも解らなくて泣き出しそうになった。
煌びやかな服を纏う男性が僕の目の前にやって来て、『神子様』と呼ぶ。
神子?誰のこと?と思って辺りを見回しても男性が向ける眼差しは僕に注がれていた。
そして唐突に理解してしまう。自分はこの世界では神子という存在でこの国の危機を救わなければならないと。
そう頭では理解しても、気持ちが追い付くというわけじゃない。
戸惑い混乱した僕を見兼ねた神官様が、暫くは部屋でこの国の勉強をした方が良い。と進言してくれたお陰で幾分か落ち着いた。
その際家庭教師として魔術の先生が一人付けられた。
名前はローレンス・ヴァルート。一瞬見惚れるくらい美しい男の人だった。
彼は魔術に置いては右に出る者が居ないと周りから評される程、優秀な魔術者だという。
そんな彼との魔術授業はハード過ぎるものだった。
一日で沢山の術式を覚えるという苦行を課したり、体力が尽きるまで魔術を操る。
慣れない事をめげずにやり通す僕は偉いと自分で自分を慰めた。
そうじゃないとやってられない。
ローレンス先生のスパルタ授業が終わりほっと息をつく。疲れたなぁ。
先生が足早に去ろうとするのを見て、その背中に声をかける。
振り返った彼に魔法を放つ際の効率さを質問すると、先生はスラスラと答え始めた。
「発動する時に障害物となるものがないと好ましい。あとは精神統一だな」
ふむ、集中力を高めるのも大事らしい。真剣に話を聞く僕を見て彼は何か言いたそうな顔をする。
何だろうと思っていると突如部屋の扉が開き、可愛らしい声が耳に届く。
「ローレンス様、神子様、此処にいらしたのね!」
淡いレモン色の髪を揺らしながら話す彼女はローレンス先生の大切な人だ。
彼女が笑えばローレンス先生の厳しめな表情がふっと和らぐ。
初めてその光景を見た時は胸が張り裂ける思いだった。
厳しくも優しいローレンス先生に惹かれていた。けれどその恋心も自覚したと同時に砕けてしまう。
異世界人の僕じゃ到底敵うはずのない相手。だって彼女はローレンス先生と同じ時を生きているのだから。
そんな相手と同じ土俵に立つなんて無理に決まってる。僕が入る隙なんて無かった。
仲睦まじく接する二人を見る事しか出来ないのが歯痒くて、悔しかった。
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