悪役令嬢のヒーローは。 ページ22
目の前に居る婚約者を目にしてハッと目が覚めた気分になった。
一気に頭の中で映像が入り乱れ、結末に辿り着く。
最悪な事に私は乙女ゲームの悪役令嬢に転生したらしい。しかもエンドは全て死亡ルートばかりという恐ろしい結末。
その事を思い出したのはゲームの攻略者の一人、アラン・エドガーと出会ったのがきっかけだ。
なんか見たことあるなー。どこだっけーと考えていたら前世の記憶が流れ込んで来た。
そしてアラン・エドガーが婚約者兼私を地獄に突き落とす人。
……無理ね。時期を見計らって婚約破棄でもしてもらおう。まだ死にたくないし。
そんな感じでのほほんと過ごしていたらあっという間にヒロインと出会う学園に入学する事に。
アラン様は私より二つ歳上だからなるべく避ければ逢わないはず。
入学式でヒロインと思しき人を捜しているとそれらしい女の子が居た。金髪を靡かせ真っ直ぐに立つ姿はとても美しかった。
画面で見るより更にかわいい……。確かこの後ゲーム攻略者との出会いイベントがあるはずなんだけど。
ドンッと背後に居た誰かにぶつかり反動で前に倒れこんだ。けれどお腹に逞しい腕が回され転ぶ事はなかった。
後ろを振り返ると黒髪の男性が申し訳なさそうに眉を下げている。
「すみません。よそ見をしていた様で。お怪我はありませんか?」
そう話す彼には見覚えがあり、攻略者の一人だと思い出す。この人のルートにも私が出て死亡エンドまっしぐらじゃない!
慌てて離れると彼は人懐っこい笑顔を浮かべる。
「俺はリアム・エドモントです。先程は失礼しました。貴女はアンジェル家のご令嬢ですね」
どうやら彼は私を知っているらしかった。まあ同じ侯爵家だしパーティーで見知ったとしてもおかしくない。
あっ、それよりもヒロインの子!と思って辺りを見回したけれど、彼女は何処にも居ない。
完全に見失ってしまった。諦めた私はリアム様に助けてもらったお礼を言う。
「リアム様。助けて頂きありがとうございます。ミシェル・アンジェルですわ」
互いに挨拶をして少し話してから別れた。ん〜、ヒロインの子見つからないわね……
中庭に出た所で視界に映った光景に足を止める。
美しいヒロインとアラン様が見つめ合う姿は神々しくて自分が入れる隙なんてないと思い知らされる。
例え悪役令嬢に成らなかったとしても運命は変えられない。
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