Amoreの嫉妬。 ページ14
イタリア人の彼と結婚して一年が過ぎた。
一年の間に数度のカルチャーショックを味わったけど夫はとても優しい。
けれどその優しさは妻の僕だけじゃなく他の女性も同じで。
夫であるロンさんは友人の女性に会うと必ず、綺麗だね。とか、美しい。とか平然と言う。
イタリア人は女性に対して紳士的だと聞いていたけれど、心の中がモヤモヤするのは止まらなかった。
国が違えば人間の性質も変わるのは仕方のないこと。
でもなぁ……
思わず遠い目になりながら空中を見据える僕の横でロンさんと友人の女性が恋人同士の様な会話を繰り広げている。
「ミーシャ、その服似合ってるよ。天使様みたいだ」
「ありがとう、ロン。嬉しいわ」
みたいな会話だと思う。不確定なのは僕が全てのイタリア語を理解出来てるわけではないから。
初歩的な言語は話せるけど難しい単語は無理だ。
でもはっきりと会話の内容が分からないのは幸いだったかもしれない。
心の靄が身体中に広がって行く感覚に気付いてソファーから立ち上がると手首が誰かの手に掴まれた。
ゆっくりと後ろを見ると友人と話していたはずのロンさんが此方を見上げている。
「どこへ行くの?買い物?」
心配そうな表情で流暢な日本語を話す夫に真顔で散歩。と伝えた。
公園のベンチに腰かけ頭を抱える。
今日の気温は三十度とムシ暑い。しかし僕が座ったベンチは木陰の部分にあったので幾分か涼しい。
外国での結婚生活は甘くないと覚悟していたけれどいざ味わうと堪えるものがある。
でもロンさんは悪気があるわけじゃない。
それを受け入れられないなんて妻としてどうだろうか。
悶々としていると頭上に差す影がより濃くなった気がした。
反射的に顔を上げれば顔が整った男性が窺わしげに此方を見下ろしている。
情けない事に知らない男性を前に口を閉ざしたままでいると男性が手を差し出した。
「大丈夫ですか?気分が優れない様なら病院へお連れしましょうか?」
ベンチで項垂れていたら急病人と勘違いされたらしい。
「あ、ぼ、いえ、私は大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
危うく僕と言いかけて直ぐに私と言い直した。
この歳で人前で僕というのは色々とまずい。にしても日本語上手いな……
「本当ですか?なら良かった」
ニコリと人の良さそうな笑顔を浮かべた男性は隣に座ると自分の胸に手を置いた。
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