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あー疲れたぁ。
ようやく邪魔な側室達を後宮から追い出せて皇妃もさぞ安心だろう。
自分もやっと静かに本を読めるから良いこと尽くしだ。
煩い環境の中では妄想も出来ず小説を書けないとか、ただの苦痛だし。
でも一番の力添えは、やっぱり陛下だった。
私が暴露した側室達の罪を精査し公正な判断を下したのは陛下だ。
あの方が他の側室達を庇ったりしていたなら、自分に明日は無かっただろう。
悠々自適な生活も陛下あってのこと。ただ面と向かってお礼は言えないから心の中でそっと感謝しておこう。
日当たりの良い中庭で花達を見るために足を運んだが、ベンチに座った途端睡魔が襲って来る。
昨日は夜遅くまで小説を書いたり、歌詞を考えたりして良く眠れなかった。
それが今頃に響いてきたんだろう。部屋まで戻るのが面倒くさい。
いいや、ベンチで寝ちゃえ。皇后の自分に話しかける人間なんか居ないだろう。
そう考えて私は目を閉じた。
寝ると言ってもそんなに時間は経っていないと思う。寧ろ誰かの気配で目が覚めた。
ゆっくり目を開くと全ての光景がさっきより低く見える。
多分頭が横になっているからなんだろうけど、ベンチの硬い部分というわけじゃない。
もう少し柔らかくて人の脚みたいな。ということは膝枕か。
その事実に気付いて身体が強張る。
嘘でしょ、そんなまさか。
皇后の自分に対して膝枕を出来る人間なんか、一人しかいない。
バクバクと心臓が嫌な音を立て始め、背中に冷や汗が流れる。
ぱさり、と髪に手が置かれ撫でられた。
「柔らかいな……」
呟く声を聞き、その声の主が皇帝陛下であると理解する。
本当にあの方が自分に膝枕を……?
こういっちゃなんだが、陛下は私に冷たく興味がない。
他人が産んだ子供の報告を自分にして来る程だ。おそらくただの嫌がらせなんだろう。
嫌われているとさえ思っていたのに、髪を撫でる手付きは物凄く優しい。
それに先程呟いた声色も慈しむ様な感じだった。通常の陛下ならあり得ない。
……もしかして、本物の陛下じゃないとか?そう考えると確かめたくなって来た。
身を起こして膝枕をしていた人物を見上げると、表情が凍り付いた陛下の姿が。
自分が起きた事に動揺しているらしく、一向に口を開かない陛下を見て此方も困惑する。
さて、なんて声をかけようか。
そもそも陛下と久しく口を利いていない事を思い出す。
まともに話したのは側室が男児を産んだと報告しに来た時だ。
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