【刀剣乱舞】子供の自分に嫉妬した【三日月宗近】 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:63,306 hit

5話ページ5

貴方サイド

「此処が君の部屋だよ」

そう言って彼女の部屋に案内する。

小さい僕はおずおずとしながら部屋に入り、中を見回した。

「一人部屋だけど、隣は粟田口の部屋だから何か有れば彼らを頼りなよ」

と、さり気なく言う。

「ありがとう」

小さい僕は振り返ってにっこり笑いながらお礼を言った。

……こういう所が、小さな差を生むのかな。

変に意識してしまい、成る可く彼女の顔を見ない様に話す。

「それと、先程居た処が大広間で、食事は基本其処で食べるから、覚えといて」

しっかり彼女が頷くのを確認し、部屋を出て行こうとすると、彼女の方から声を掛けて来た。

「あの、貴方はぼく……なんだよね？」

不安そうに見上げ、その表情は曇っている。

「そうだよ」

短く答えると、彼女は意を決した様な顔付きになった。

「ぼくは、貴方だけど、二番目とか、そういうあつかいはしてほしくないから、がんばる」

まだ少し幼さが残る口調だが、考え方は僕と良く似ている。

僕だって、顕現された本丸に最初の自分が居ても、負けたくないと対抗心を燃やしたくなる。

今だってそうだ。

まだ子供で、それなのに考え方は立派なのだから、負けたくないと思う。

大人気ないとは分かって居ても、自分自身がライバルとして現れたら、焦ってしまう。

特に、恋仲である三日月を取られてしまうかもしれない。

それが何よりの不安だった。

現にこの子は、僕より表情豊かで、誰にでも愛想が良い。

本当に同じ自分なのか疑うくらいだ。

僕は自分の気持ちを押さえつけ、平静を装って言った。

「その心意気は立派だよ。頑張って強くなれば、皆も認めてくれると思うよ」

全くそんな事は思ってないが、やはり子供を傷付けるのは如何なものかと思い、敢えてそう言った。

すると彼女は強張った表情を緩くし、また花が咲いた様な笑顔で言った。

「うん！がんばる！」

そんな彼女を見て思った。

ああ、僕よりずっと純粋なんだなって。