逆先夏目 ページ2
貴方サイド
「もう嫌だ！夏目なんて大っ嫌いだ！」
机をバン！と叩く。
それを冷めた目で見る零先輩。
「……んなこと言うために、態々俺の所に来たのか？」
僕は零先輩に抱きつき、
「だって聞いてよ！夏目、春川宙って子を弟子にしたらしいんだけど、その子ばっかり構うんだよ」
僕が彼女なのに、全然構ってくれない。
シュン、としていると、零先輩は頭を掻き、
「だったら、夏目に構って欲しいって正直に言ってみろ。Aのお願いなら聞いてくれるんじゃねーの？」
うーん……自信は無いけど、やってみるか。
僕は零先輩にお礼を言って夏目を探す。
夏目、何処にいるんだろう。
すると、楽しそうな声が聞こえた。
見ると、宙君と夏目がゲームをしていた。
夏目のあんな笑顔、初めて見たな……
でも、男に嫉妬する僕は、心が狭いのかもしれない。
夏目の邪魔はしたくないし、何よりあの二人は師弟の関係なんだし、僕が踏み入る領地じゃない。
そう、思ってたのに……
さっきから胸がズキズキするし、悲しい気持ちになって来る。
なんなんだよ、この感情……
しまいには目の前がボヤけて見える。
こんなんじゃ、夏目に会いに行けない。
ゲー研の部室の近くまで来ていたが、引き返す。
すると、後方でドアが開く音がし、直後大好きな声がした。
「A……！」
後ろから腕を掴まれ、咄嗟に下を向く。
「夏目……何？」
そう聞くと夏目は戸惑ったように、
「あァ、君が何処かに行ったかラ、心配してたんだけド、ソラがAの足音がするって言うから様子を見に来たんだヨ」
何故だろう。嬉しいことを言われてるのに、気持ちが晴れない。
夏目もずっと下を向く僕に疑問を感じているのか、視線が痛い。
「さっきからどうして下を向いてるノ？」
その質問にも答えることが出来ない。
『ぼくを見て』
声が聞こえ、自然と上を向いてしまう。
蜂蜜色の綺麗な瞳と目が合う。
僕の顔を見た夏目は目を見開いた。
「どうしたノ？何処か具合でも悪いのかナ？」
頭を撫でてくれる夏目にそっと抱きつく。
「夏目……もっと構って」
そう言うと夏目が動揺するのがわかった。
「不安にさせるようなことをしたみたいだネ。ごめんね」
そっと抱きしめ返してくれる夏目の体温が、とても心地良かった。
-fin-
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作者名：望月海 | 作成日時：2017年8月13日 14時
