5話 ページ5
小さい僕が和菓子に夢中になっているのを見計らって、主の部屋に荷物を届ける。
襖を開きっぱなしにしているので主がすぐに荷物を持った僕に気づく。
「あ、Aわざわざありがとー♡買い物ちょー楽しかったし、また行こうね〜」
「主が付き合ってくれって言うなら、いつでも付き合うよ。僕も楽しかったし」
「そう言ってくれると思ってた♡あとこっちでやっとくから大丈夫よ。それより小さいAはどんな感じ?馴染めそう?」
「燭台切が和菓子を勧めたら、あっという間に懐いたよ」
そう告げると、なぜか主がにやにやと口元に笑みを広げる。
「……なに?」
「いや〜、A同士でみったんの取り合いになるかもしれないな〜って考えたら萌えてきちゃって……♡」
「取り合いって……小さい子ども相手にそんな事しないよ」
「え〜、恋人が他の女にデレデレしてたら嫌じゃない?」
不満そうな表情を作りながらそう言う主だが、そういった感情に疎い僕は首を傾げてしまう。
試しに燭台切と小さい僕が一緒に居るところを想像してみるが、主の言う嫌な感情が湧き上がってくる事はない。
「ま、Aもいつかは体験するかもね」
意味ありげに笑う主の言う事が現実になるなんて、この時の僕はまだ想像すらしていなかった。
主の部屋から戻る途中、大倶利伽羅と鶴丸に出会した。
「捜したぞ」
出会い頭に大倶利伽羅にそう言われ、僕はぱちぱちと目を瞬かせる。
「捜してた?何で?」
「君がいないって小さいAが泣き出してな。今光坊があやしてるんだが早く来てくれ」
鶴丸にせっつかれ、僕らは大広間に急ぐ。
襖を閉じている大広間から泣き声が漏れ聞こえ、慌てて襖を乱暴に開け放つ。
そこで見たのは、燭台切の膝の上で大粒の涙を流している小さい僕。
その周りを短刀たちが囲って慰めている。
燭台切の手袋で包まれた手が小さい僕の頭を撫で、優しく笑いかける。
その光景を見た瞬間、ちりっと胸の奥が焦げついた感覚がした。
(……?)
今の感覚はなんだろうと内心首を傾げていると、襖の前に突っ立っている僕に気付いた小さい僕が駆け寄ってくる。
足元に抱きついて来た小さい僕を抱き上げてやると、ようやく泣き止んだ。
大広間に居た刀剣たちはあからさまにホッとした表情を見せ、なんとなく居心地が悪いと感じた。
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