粟田口の新しい短刀が来たら僕の扱いが雑になった件について【刀剣乱舞】

43話 ページ44

大広間で短刀達による百人一首が烈しさを増してきた時。

負けてしまった信濃は部屋の隅に移動し、未だ己の主がやって来ないと気付く。

「あれ、大将は？まだ来てないの？」

信濃が不意にそう言った言葉に、刀剣達は百人一首をやる手を止めて顔を上げた。

「まだ仕事が終わってないんじゃない？」

「でももう一時間くらい経つぞ。いくらなんでも遅すぎやしねぇか？」

薬研が乱の言い分を否定しながら時計を見て時間を確認する。

大広間になんともいえない雰囲気が漂い出す。その空気を察知した石切丸は笑顔で提案した。

「なら、様子を見に行こうか」

石切丸の言葉に短刀達が頷き、大広間を出た所で出陣していた太刀達と出会した。

「いち兄！」

「もう帰ってきたんですか？」

秋田と前田が兄の一期に駆け寄り、その腰に抱き着きながら一期の顔を仰ぐ。

「随分と早い帰還だね？」

いつもは二時間か三時間くらい出陣しているので、不思議に思った石切丸が三日月に訊く。

「主は何処だ？」

質問に質問で返され、さすがの石切丸も面を喰らった。

「審神者部屋だと思うけど……」

若干困惑しながらも答えた石切丸。短刀達も異様な雰囲気に段々と不安が募って行く。

「主と連絡が取れなくてな。様子を見に帰ってきたんだ」

ようやっと鶴丸が問いに答えた。しかしその内容に皆が顔を顰めた。

自分達の主に何かあったんじゃないかと考えた刀剣たち。

次の瞬間、審神者部屋の方から悲鳴が上がった。

「主！？」

「おい、どうしたんだ！」

叫び声を聞いた全員がその場を走り出し、次々と部屋に辿り着く。

そこで見た光景に、全員が息を呑んだ。

床には夥しい程の血が溢れ、その中心に主であるAが倒れている。

直ぐに医療の心得がある薬研が止血をしようとするが、傷がどこにも見当たらない。

可笑しいと感じた薬研はAの身体を揺さぶった。

「大将！大将起きてくれ！」

何度か身体を揺さぶったのちに、閉じられていた目蓋が開く。

「薬研……？」

身体を起こしたAは目の前に居る薬研が今にも泣き出しそうな顔をしている事に気付く。

「なっ、どうし……」

た、と言い掛け、よく見ると他の刀剣達が此方を心配そうに見ていた。

中には涙ぐんでいる者たちも居て、唖然としてしまう。

「大将、血が……」

薬研の言葉に徐に自身の身体を見下ろせば、大量の出血が目に飛び込んできた。

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