めせもあ。短編集 (ページ16)

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一言にときめく5題-気まぐれプリンス-3 ページ16

「…僕の彼女になにか用ですか？……それとも、次の駅で一緒に降ります？駅員室に案内しますよ？」

穏やかだけど、有無を言わさないこの声は……。

『…ぷんちゃん？』

「…大丈夫？A。」

いつの間にか痴漢は居なくなっていた。
そんな事より…久しぶりに聞いた彼の声に、どうしようもないほど胸が締め付けられる。

『ぷ…ぷんちゃん…。』

「怖かったなぁ、もう駅着いたから…送ってくわ。」

そう言って私の手を引きながら、開いた扉をくぐる。

駅を出て、家への帰り道。
ぷんちゃんは私の手を握って少し前を歩いてる。

『…ぷんちゃん…ありがとう。』

私がそう言うと、彼は歩くのを止め振り返る。

「……この前、ごめんな。怖がらせてしもた。」

…この前って、多分あの練習場での事だろう。

『ううん、怖くなんてなかったよ。でも、どうしたらいいかわからなくて…私こそ、そっけなくしてごめん。』

「Aが謝る事ないよ。…俺も変な意地はってしもて……今日かて、ちゃんと最初からAの事送っとけばよかった。……怖かったよな？本当ごめんな？」

そこで私はやっと気付いた。
最近痴漢にあってなかったのは……ぷんちゃんが私の事送ってくれてたからだ。

『ぷんちゃん…ぷんちゃん…』

この人の優しさが胸にしみて…

この人の優しさに気付けなかった自分が情けなくて…

私の目から涙が次々とでてくる。

「もう意地なんてはらんから…ずっとAのこと守らせて？好きな子を…守りたいねん。」

涙で彼の顔がよく見えない。

でもきっと私の大好きな優しい顔なんだろうな。

『うん。…うん。…わ、わたしも…わたしもぷんちゃんの事…好き…。』

彼は涙でぐちゃぐちゃな私の顔を持ち上げて

「ずっと、そばにおる…。せやから」

5.泣きやんで？

涙で濡れた目元にそっとキスをした…。