めせもあ。短編集 (ページ13)

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一言にときめく5題-野崎弁当-2 ページ13

あぁ、駄目だ。
野崎さんに気持ちをぶつけるだけぶつけて外に出てきてしまった。

何が『ハッキリ言ってよ！』だ。
結局、私はその言葉を聞きたくなくて逃げてしまう。
本当は笑顔で『頑張ってね！応援してるからね！！』って言うつもりだったのに。
……私の心はそんなに綺麗じゃない。

『寒…。』

暦では初夏でも、北海道の夜はまだ肌寒くて…東京は今頃は梅雨？
梅雨なんて経験した事ないなぁ。夏はこっちより湿度が高いのに、大丈夫かな？ゴキブリとかもいるんだよ？冬は雪も降らなくていいかもしれないけど、家の中で半袖とかできないんだよ？？

東京に行って欲しくないのに、東京に行った後の心配をしてしまう。
結局止められないってわかってる。
誰よりも近くで貴方を見てきたから。
喜びも、悲しみも。
全て見てきたから。

「A！！！」

『…野崎さん」

彼は肩を上下に揺らしながら、私にパーカーを差し出してくれた。

「…バカ！変な男につかまったらどうすんだ！！……はぁ、違う。違うよな。A、ごめん」

そう言ってゆっくり私との距離を縮める。

「俺、ずるかったよな。【むすめん。】としての俺も、【Aの彼氏】としての俺も両方失いたくなくて、Aに我慢ばっかり押し付けてた。」

「でも…」

「でも俺はやっぱり両方欲しい。」

「俺、もっと頑張るから。メンバーにも、ファンの人達にも認めてもらえるように頑張るから。」

「その時は、Aを迎えに行く。」

…ずるい人。
夢も私も手放す気なんて無いんだ。
そんな…まっすぐな眼で見られたら何も言えないじゃない。

「だから、その時まで……。」

4.待ってろ

あんまり遅いと、私から押しかけに行っちゃうんだからね。

……2人の影が重なった。