《限界メンバー》彼らと過ごす日々2

虚偽の夢　gt ページ25

シリアス、ﾀﾋネタです。
夢主も動画投稿者だったという設定です。
gt視点


ね、知ってる？人との記憶は声から忘れるんだって


そんな話を聞いたことがあったからだろうか、俺がお前の動画を繰り返し聞き続けてしまうのは。

思い返したようにお前が映る写真を眺めて、メッセージを遡り思い出を確かめるのは。

『こんな馬鹿みたいなことしてたな』

隣で笑うAはもう居なくてこれから一緒に思い出を作ることは出来ないと分かっている、分かっている筈なのに…

気付けば名前を呼んでいて、何かあった時は後で話してやろうなんて考えてるから現実を見れていないことは明らかだろ。

SNS上でお前の死を悲しむ声を見て、彼奴らが涙を流しながら墓参りに行くのを見て、俺もあんな風に死を受け止めてしまえばもっと楽に生きれるのか。

見えることのない体には目を凝らして
聞こえもしない声に耳を済ませて
あるはずのない未来に期待を膨らませて

こんな生き方をしたって虚しいだけで何も満たされないけど愛したAのことを何も忘れたくはなくて。

『俺はどうすりゃいいんだよ…』

途方に暮れてしまった俺はベッドに倒れ込んだ。泥のように沈んでいく意識にこのまま…なんて思ってしまった。


目を開けると真っ白な空間で直感的に『あぁ、夢だ』と気づく、ただそこの真ん中にいた人の後ろ姿に呆然とする。

『なっ、A…？』

掠れた声を出せば静かに此方を振り向いた。その顔は紛れもなくAな筈なのに違和感を覚える。俺の呼びかけに答えないあいつはただ微笑んでいた。

この空間がAが見せているものだと思っていたが違うようだった、これは俺が望んでいるだけで映し出された虚偽なのだと。

鮮明に記憶を覚えているせいか現実味を帯びていて妙に心地が良かった。けどあいつが声を出さないのは俺の記憶に声なんてとっくに無くなっているから。

『いいよ、いてくれるだけで。お前に話したいこといっぱいあるから聞いて欲しいんだけどさ。』

あまりにも静かな限界の様子とかAが居なくてもいつも通り回る世界の苦しさとか…今まで溜め込んだもの全てを吐きだす。本音も、弱音も。

『俺の側から、居なく、なるなよっ…』

きっとこの夢が醒めればいつも通りの生活を送ることになる、残酷な朝が来て死んだように日々を過ごす。

そんなことなら、この夢(うそ)が醒めなければいいのに

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