略奪 gt ページ28
傘を差さないまま激しく降る雨の中を走る。
兎に角ここから走り去りたいとしか心の中にはない。
見てしまったんだ。今朝いってらっしゃいとキスをして見送ってくれた彼が、知らない女と歩いているのを
それだけならまだ許したかもしれない、しかし彼らが向かったのはホテル街で。
崩れてしまいそうな膝を必死に動かしてただ1人だけ頼れる奴の家へ走った。
今は彼と住んでいるあの家になんか帰りたくないから
身体がびしょ濡れのままインターホンを押す。何の連絡も入れていないからもしかしたらいないかもしれない。
そんな不安もあったが家の中からドタドタと大きな音がした後扉は直ぐに開いた。
「A?!どうした、そんなびしょ濡れで。しかもこんな時間になにがあったんだ?」
目を見開きこの状況に次々に質問するぐちつぼに答える元気は残っておらず黙り込んでいるととりあえずと家にあげられた。
風呂を沸かして着替えも大きいけど、と言いながらぐちつぼのTシャツを渡してくれた。
風呂から上がり髪の毛に水滴が付いたままだったが、ぐちつぼの向かいの椅子に座りここに来た経緯を話すことにした。
『…私、浮気されてたんだ。バカだよねほんと。気付かなかったんだ……』
彼のことを疑ったことなんて無かった。その事実がまた私を苦しめる。
「まじで、か…?それ。…そっか、辛かったよな…」
よく惚気を聞いてもらっていたぐちつぼも信じられないという顔をしていたが見たから、と言うと私の頭を撫でて同情してくれた。
今弱った私の心にはぐちつぼの優しさが心地良く、この穴を埋めて欲しいとさえ思わせた。
でもそんなの最低だ。だってそれは目の前の彼を利用するということだから。
「俺も最低だよ。今お前がここに来てくれて、もしかしたら俺にもチャンスがあるかもって思ったから。」
その言葉に思わず顔を上げる。先程の気持ちが声に出ていたのか、少しだけ期待を含んだ瞳に全て委ねてしまいそうになる。
『ほんとにいいの…?こんな、利用しようとしてるんだよ?』
「うん、俺はいいよ。Aが後悔しないなら」
向かいに座っていたぐちつぼは立ち上がり、私の隣に来て恐る恐る唇を重ねた。
離れそうになるぐちつぼの後頭部を押さえ、深く長く求める。お互いに理性なんて欠片も残っていない。
ガラガラと関係の崩れる音がした。
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白いアスパラ - めちゃくちゃ好きです!需要しかない…続編更新楽しみです! (2020年5月29日 15時) (レス) id: 72a8b58e62 (このIDを非表示/違反報告)
伯爵(プロフ) - 逆音つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色さん» そう言ってもらえて嬉しいです…!!この作品が完成したら続編を作ろうと思います! (2020年5月17日 4時) (レス) id: 3c3807f15d (このIDを非表示/違反報告)
逆音つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色(プロフ) - 需要...需要しかないです...ください続編...()毎回毎回楽しませて頂いてるので、ぜひ、無理のない更新頻度でこれからも頑張ってください! (2020年5月17日 2時) (レス) id: 9e136fef77 (このIDを非表示/違反報告)
伯爵(プロフ) - 羅忌*ベルーガさん» ほ、ほんとですか?!ありがとうございます…!応援とても嬉しいです! (2020年5月17日 2時) (レス) id: 3c3807f15d (このIDを非表示/違反報告)
羅忌*ベルーガ(プロフ) - いつもほのぼの気分で読ませて頂いております!続編の事なのですが、私は需要あるなって思います!では、更新頑張ってください!! (2020年5月17日 1時) (レス) id: b3da06cea4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伯爵 x他1人 | 作者ホームページ:今のところはありません
作成日時:2020年4月23日 7時