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#000 黒が双つ ページ40

太宰side

「太宰、お前の女癖は

いつからそんなに悪くなったんだ。」

中也の声が頭に響く。

私は

『さぁ?元からだろうね。』なんて答えたけど。







『私と死んでくれないかい?』




気まぐれにそんなことを聞いた。

その女は首を縦に振った。

彼女らは決まって「私の何処が好きなの?」

なんて聞いてくる。

『性格、容姿、思考…全てだよ。』

"ちっともAに似ていないもの。"


女は満足気に微笑んだ。

その言葉の意味も知らずに。


『嗚呼、生きるのはこんなにも苦しく、辛い』

其れは君が一番解っているだろうに。


何で私が生きなきゃならないんだ。


何故、私を置いていったのだ。


私は曖昧に笑った。

泣けない。

君の死に涙一つ流せない。





これだけ悲しいのに、
今やそれを伝える相手すらいない。




墓標に手向けようと買った花はこの女に

渡してしまった。

季節外れの桃の花ーー…君が生まれた日に

飾られる花ーー

枝を束ねたその不恰好なブーケを、君に。


私が白のドレス姿を強請ったら、

君は黒と言ったのだろう。








君が生きていたら、

死にたいだなんて思わなかった。




「ぜんぶ、君のせいだよ」






中原side

アイツが嫌いだ。

好きな女ひとつ守れねぇアイツがーーきらいだ。


けれど、それよりも嫌いなのはーー

自分がAの救出に行っても、

助けられ無かったと理解している

自分自身だ。


馬鹿はよく、やってみなきゃわからないーー

と言うが、戦闘経験を積むとやってみなくても

ある程度解るようになる。

どうやっても、

結果は変わらなかったのだーー…と。


怖いもの知らずなアイツが、

『気に入っていた…』

なんて、本当に、馬鹿だーー…

結局本人にすら伝えられ無かった。

普段、気の合わない太宰だが、

異能と“こういう時”だけは意見が一致する。



時折Aが此方を向いて微笑んでいる

ような気がしてしまうのだ。

「死んだとでも思ったの?」…と。



こうなってくると最早認めざるを得ない。







“俺は、アイツが好きだったんだ。”







墓標だけの墓に、染みがいくつも出来ている。



晴れているにもかかわらず、降り続けるその雨は…



声を絞り出すように言った。



『初めて渡す花束がこんなだなんて…な。』



ぎゅっと握りしめられた花は



はらはらとその薄紅の花弁を散らした。

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置いときもの(プロフ) - 黒木宙さん» コメント有難うございます!更新頑張りますのでお待ちくださいね!!体調に気を付けます!笑 (2017年7月17日 18時) (レス) id: 001e2135c2 (このIDを非表示/違反報告)
黒木宙(プロフ) - 何時も楽しみにしています!次が待ち遠しいです笑体調には気を付けて頑張ってください! (2017年7月17日 18時) (レス) id: 0545e227ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:置いときもの | 作者ホームページ:http://user.nosv.org/p/oitokimono/  
作成日時:2017年6月15日 23時

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