【短編集】空気とバターとちょっとの小麦粉【ワールドトリガー】

岩礁にて・後篇【三輪秀次】＿＿＿アクア様リクエスト ページ16

主「だからね、今日はさよならを言いにきたの。…突然でごめんね。」





そう言って作ったような笑顔を浮かべるAに腹がたって。

オレはAと離れるのはイヤだけどAはそんなことないのか？

違うに決まってる、そんなことはわかってるのだが、体が言うことを聞いてくれなくて、口を開けばAを罵ってしまいそうで怖かった。





三「そうか…じゃあ、今まで楽しかった。…さよなら。」







その場にいるのがイヤになり、走りだした。

もう二度と会えないなんてことは考えたくはなかった。






・



・





あれから一週間たって、もう一度あの海に足を運んだ。

あそこに行けばきっとまたAに会える。そうだ、まだAは生きているんだ。

…そう言い聞かせて。


・


・



結果から言うと、そこにAの姿は無かった。

何度呼んでもいくら待っても、Aは姿を現さない。




三「A…。」






本当にAはいなくなってしまった。

姉さんもAも、オレを置いていく。

そう考えると、泣きたくもないのに自然と涙がこぼれて、しゃがみこんだ。









…と、そこには重ねてある淡い色の貝殻。

あまりに不自然に重なっているので一枚取って見た。






すると、そこには掘られた文字が並んでいた。







『しゅーじへ


きゅうなおわかれでごめんね。わたしもしゅーじといっしょにいられてたのしかった。

わたしは、ぶっきらぼうだけど、おもいやりがあって、やさしいしゅーじがだいすきだったよ。


もうあえないけど、わすれないで。

あなたにひかれていたにんぎょが、たしかにいたことを。



つよくいきてください。


あなたがしあわせになることをいのっています。



Aより』





見たとき、どっと涙があふれた。






あぁ、忘れない。オレも、お前のことが…




三「オレだって、好きだよ。」







もう初めて会ったときから惹かれていたのかもしれない。

Aが、恋しい。

強く生きて、と言われたからそんなことはしないけど、この海に入れば、オレもお前と一緒にいられるか、とか思ってしまう。






でも、また生まれ変わってお前と会えることを信じて、生きていく。

もしもそんなことがあったらまたお前もここにきてくれるといいな。





オレの命が尽きるまでにそれがなかったら、オレは命尽きるときにここにきてこの海に飛び込んでみるな。






＿＿＿＿＿＿お前を思って生きていくから。

ずっと【迅悠一】＿＿＿アイカ様リクエスト→←岩礁にて・中篇【三輪秀次】＿＿＿アクア様リクエスト

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す