もうすぐ付き合う2人の話【宮侑】

episode 5：期待 ページ6

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角｢さっきのトス、超打ちやすかった｣

侑｢フッフ、せやろ〜？｣





タイムアウト中、監督の話を聞きながらスクイズを手に取る。


水分補給をした後、むず、と沸いた僅かな期待を抱いて観客の方へ目をやった。


数日前、Aさんに今日練習試合があるということだけ伝えた。だが緊張や、断られたらという少しの不安から、｢応援にきて｣とちゃんと誘うことはできなかった。


＿＿もしかしたら来てくれてたり、せえへんかな。




1階と、外には見当たらない。あとは2階だけ。


ほとんど諦めながら上に目をやった時、彼女はいた。





侑｢……うわ、おる、まじか｣





思わずぼそ、と呟いてしまった。確実に目が合っている。


そんなにしっかりと両手で手摺を握って、少し前のめりになって俺の試合、観ててくれたんや。


じわじわと嬉しいような、ドキドキしてるような、心地良い緊張が湧いてきた。間もなくタイムアウトも終わるという時、｢ツム｣と片割れが俺を呼ぶ。





侑｢なんや、サム｣

治｢お前、見すぎやろ。分かりやすいわ｣

侑｢……なっ！？｣





勢いよく隣を見ると、呆れ顔に近い表情で治が俺を見ていた。





治｢見てんのアレやろ、この前の……Aちゃんやろ｣

侑｢な、にを気安く名前呼びしとんのじゃ！｣

治｢ええやろが別に、上の名前なんか覚えてへんわ！｣

侑｢俺ですら名前で呼べてないのに……！！｣





ぎり、と唇を噛むと笛の音が鳴った。流れは確実にこっちのモンや、と一気に頭が切り替わる。


＿＿ああ、あかん。余計なことは考えんと、ええとこ見せて、俺のことかっこええって思わせたる。


俺は息をついて、｢よし、｣と小さく呟くと、コートに戻った。





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