さんびゃくななじゅうはち。 ページ21
『っこれが、師匠の打った刀……、あぁ、なんて美しいんだ！』
＊＊＊
その夜、草木も眠る丑三つ時の頃、綺麗なお月様が夜空に浮かんでいたはずだけれど、国行が拠点としていた鍛刀場は山にあったこともあって、辺りは真っ暗だったわ。
国行もぐっすり眠っていて、私は明石国行の隣で飾られていたわ。刀の姿だったから感じることはなかったけれど、気持ちの良さそうな夜風が吹いていたわ、そんな中、鍛刀場の扉がガラガラガラッと音を立てて開いたの。
辺りを不審な様子で見回して、そろりそろりと音も立てずに鍛刀場へ入ってきたのは、当時、国行の一番弟子だった男。
男はそのまま飾られている私たちの元へやって来て、そして私をギラギラとした熱い視線で見つめて来た。
スッと鞘から私を抜いて、それをもちあげる。月に反射してキラリと光った私を見て、彼はこう言った。
『なんて、綺麗な刀……』
それまではただ、国華に見惚れているだけの視線だった。今思えば。国華を通して、師匠である国行に羨望の眼差しを向けているようにも見えたわ。
けれどその瞬間、彼の瞳が濁ったの。キラキラとした装飾品のような視線から、私利私欲にまみれた薄汚れた視線へ。
彼は私を鞘に仕舞うと、あろうことか鍛刀場から私を持ち去った……つまり、私を国行から盗んだのよ。それが表すことすなわち、師匠への裏切り。
彼は私を強く抱き締め、必死で山を駆け下りた。足を止めたら、背後から師匠に殺されるとでも思ったのかしらね、決してそんなことはないというのに……何故なら国行はあの時、私を完成させることが出来た満足感から、見事にぐっすりと寝ていたんだもの。
彼は町の外れにある自分の家へと飛び込んだ。彼には妻が居て、何事かと慌てて出て来た。彼は咄嗟に、私を背中の後ろに隠すと、
『なんでもねえ、起こしちまってすまねえな。』
と優しく妻に語りかけ、妻を奥へと戻した。妻が戻ったことを確認した彼は、羽織を脱ぎ、その羽織で私が隠れるように包むと、それを大事に抱えて、自分も奥の部屋へと足を進めた。
これが映えある一回目の、国華盗難事件よ。
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まぴおろごん@通りすがりの黒魔道士A(プロフ) - 華音さん» ひぇ……本当いつもありがとうございます！こう言ってはなんですが凄く助かります笑(いつもすみません)更新頑張ります！ (2020年7月1日 20時) (
レス) id: 8464144616 (このIDを非表示/違反報告)
華音(プロフ) - こんにちわ( ´ ▽ ` )お久し振りです。早速最新話読ませて頂きました♪ですが最後の辺りで文章に誤字が御座いましたので^^;御報告を致します。誤「白夜さんが変え出てくる」→正「白夜さんが帰って来るのは」ですね☆それでは次のお話を楽しみにしております(*^^*) (2020年6月30日 14時) (レス) id: 85eea2d6ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まぴおろごん@通りすがりの黒魔道士Ａ | 作成日時：2020年6月16日 23時
