御 夜 祭 .

終焉. ページ26

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誰を選ぶわけでもなかった
選んではいけない、それが正解だっただけだ



夜に浮かぶひとつぶの涙は意図も容易く瞑れた
何にも楽しくなかったわけじゃないのに涙が止まらなかった



人はいつか死を迎える
誰からも愛を差し出されなくなった時、それが私にとって“死”だ








『この日がやって来た、それは幸せなのかな』








愛の言葉を囁いてくれた人はもういない




何処かで私じゃない誰かを愛し、
大切なものができたのかもしれない




愛する人や、子供を産めなかった女性としての幸せ
それと交換にたくさんの人のお相手をできたことの倖せを貰った







「A」


『何で………』


「待ってた、ずっと。さ、行こう？」







吉原を辞める時、やっと自由に空を仰いだ時
待っててくれたのは愛しのあの人




涙を拭って彼の胸に飛び込んだ
受け止めてくれた優しい微笑み








「よく頑張ったね、A」







このときを待ってた
やっと本物の愛を貰った




彼と手を繋いで明るい空の下で口付けをした
今までの寂しかった分、彼に思う存分甘えようと心に決めた








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作者より→←原口文仁.

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