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【八】一章-国永の小太刀7- ページ9

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「あの、お二人の都合お訊きしていなかったのですが……手合わせの途中、でしたよね。大丈夫なんですか?」
「良いんじゃないか」
「でも……」
「いや、というか、一期はもう案内する気だぜ? ほら」

あっけらかんとした返答がAの不安を煽るのだが、鶴丸は至って真面目な顔付きで一期を指差した。
先程まで近くに居た一期はいつの間にか少し離れた位置に移動していた。

手合わせに使用していた木刀を元の場所に片付け、当然のように戻ってくる。
お手をどうぞ。と何処の王子だと言いたくなるような所作で腰を下ろしているAに手を差し伸べた。Aは戸惑ってその手を取るか否か考えあぐねていたが、にこやかな表情を崩さず待っている一期に結局折れて、たどたどしく一期の手を取った。

「A殿。では、参りましょうか」

起き上がり一期に引かれるままAは鍛練場から外へ移動する。ひょこひょこと覚束ない足取りで一期の後を着いていく。

一歩遅れて道場から出てきた鶴丸もなに食わぬ顔で二人を追う。
ぴたり、と一期はその足を止めた。顔だけを後ろの方へ向けて、軽くあしらうようなトゲのある言い方で笑いかける。

「案内は私一人で事足りますぞ、鶴丸殿」
「いやいや、俺も薬研に頼まれたんでな。共に行くさ」

そうですか。何処か不満げにポツリと返した。
その様子ににんまりとした含み笑いを浮かべた鶴丸が「なんだ、俺は邪魔者かい?」と茶化した。図星を突かれたのか、一期は無言で歩く速度を早めた。

「だいたい手合わせの相手が居なくて、鍛練も何もないだろう」

はあ、と溜め息を吐いた鶴丸は物憂げな様子で肩を竦め呟いた。
その隣でAは一期と鶴丸とを交互に見合わせ申し訳なさそうに項垂れた。

「やはり私は断るべきでしたか?」
「君は心配しなくていいさ。なんせ、俺も一期も好きでやってるんだ。ここは俺達の言う通り案内されてくれると有り難いがなあ」

俯いた頭を撫でて、しゅん、としょげかえるAに鶴丸は目尻を下げ兄らしく微笑んで見せた。

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メランコリー - 面白かったです。続き気になります…!次の更新楽しみです! (2017年2月20日 21時) (レス) id: f9cb988cce (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - とても面白いです。(^.^) 更新待ってます! (2016年3月26日 22時) (レス) id: d0cc45d452 (このIDを非表示/違反報告)
ナヌノキ(プロフ) - とっても面白いです! 文才あってうらやましいです……! これからも、更新 頑張ってくださいッ!! (2016年1月1日 10時) (レス) id: e6d0dbd909 (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 時狐@in率低下さん» ご質問ありがとうございます。刀派というのは夢主の設定のことでしょうか。そのことについてですが、刀剣乱舞の公式設定で鶴丸国永が刀派なしと書かれており、その設定を使用しました。この作品では鶴丸の兄弟刀として書いているので同じように刀派なしとしています。 (2015年10月11日 0時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 雪乃さん» コメントありがとうございます!落ちの方はまだ考え中ですが、おそらく鶴丸寄りにはなると思います。 (2015年9月22日 12時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ノ杜ノ | 作成日時:2015年9月3日 17時

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