【三十三】三章ｰ朧気な光り3ｰ ページ34
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そして、噂をすれば影がさすとはよく言うもので、出陣部隊の帰還の知らせを訊いた鶴丸が姿を見せた。
「……A！」
白い影が視界に写ると、Aは先程までの高揚した雰囲気とは一変し、今度はみるみる青ざめていった。
叱られるのを回避する子供かの如くAは咄嗟(とっさ)に姿を隠すように一期の背にすがり付いた。
「い、一期さん……」
どうしたら、と答えを乞うように自身の刀を握りしめAを一期の方へと視線を仰いだ。
困り顔でうつむきがちに目線を寄せるAに精神を乱される一期だったが、揺らぐ理性を一掃するかのように鶴丸の声が響く。
「一期に隠れていないで、出てこないか、A！ 怪我をしたのはもうわかっているからな」
「け、怪我といっても、軽傷に近いものですし、真剣必殺も出して、今日は誉もいただいたんです。兄さんに怒られる程のことは…！！」
「誉がなんだ！ 君の戦い方は全くなっちゃいないじゃないか！」
怒気が滲む鶴丸の叫びにAは思わず口をつぐんだ。
ズカズカとAの方へと足を進めて、一期の背に隠れる血濡れの身体に手を伸ばした。
叱られる覚悟は出来ていても、やはり叱られるのは嫌なもので、Aは強ばった身体を一期の背に寄せ、戦闘衣の一部を握り締めた。
人知れず一期の鼓動は早まっていた。
鶴丸はAの肩を掴むと、一期から引き剥がすように己の身体へと引き寄せる。
「……に、兄さん！？ 私はいま戦帰りで、その、汚してしまいますよ……？」
「そんなことはどうでもいい！」
白い自身の装いが汚れることも鑑みず、Aのその小さな身体を包み込んだ。
「君が無事に帰ってきてくれて良かった」
いつもの小言臭い叱り文句ではなく、心底安心したという余裕のない言葉だった。
何もかも飲み込んだような乾いた声音だ。
先程まで叱られる覚悟だったAからすれば面食らったも同然で、不思議そうに鶴丸の顔を覗きこむ。
そこにはいつもAに見せていた長い刃生を歩んできた刀としての余裕を何処かに置いてきたような、憔悴した顔があった。
心配をかけたのだということが嫌でも伝わってくる。
今日の戦いぶりについて叱られたのならば色々とこちらの言い分も返そうと思っていたのだ。
しかし、Aを包み込む鶴丸の腕が僅かに震える、その事に気づいてしまってはAはもうこの言葉しか返せなかった。
「心配をかけてごめんなさい、鶴丸兄さん」
続く (更新停止中)
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メランコリー - 面白かったです。続き気になります…！次の更新楽しみです！ (2017年2月20日 21時) (
レス) id: f9cb988cce (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - とても面白いです。(^.^) 更新待ってます！ (2016年3月26日 22時) (レス) id: d0cc45d452 (このIDを非表示/違反報告)
ナヌノキ(プロフ) - とっても面白いです！ 文才あってうらやましいです……！ これからも、更新 頑張ってくださいッ！！ (2016年1月1日 10時) (レス) id: e6d0dbd909 (このIDを非表示/違反報告)
ﾉ杜ﾉ(プロフ) - 時狐@in率低下さん» ご質問ありがとうございます。刀派というのは夢主の設定のことでしょうか。そのことについてですが、刀剣乱舞の公式設定で鶴丸国永が刀派なしと書かれており、その設定を使用しました。この作品では鶴丸の兄弟刀として書いているので同じように刀派なしとしています。 (2015年10月11日 0時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
ﾉ杜ﾉ(プロフ) - 雪乃さん» コメントありがとうございます！落ちの方はまだ考え中ですが、おそらく鶴丸寄りにはなると思います。 (2015年9月22日 12時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾉ杜ﾉ | 作成日時：2015年9月3日 17時
