【二十九】二章ｰ本丸日和13ｰ ページ30
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自分は「一期一振殿」と呼ばれているのに。
部隊長故か、Aの一歩引いたような距離感を歯痒く思う気持ちがふつふつと心を占める。
嫉妬に近い、もやもやとした感情が自分の中を掻き乱す。
「私のことも気軽に呼んでいただけませんか？」
気が付けばそう口にしていた。許容しきれぬその感情に珍しく抑えが効かなかった。
はたと自身の口から出た言葉を振り返り、一期は顔に熱が籠るのを感じた。
突然のことにAは鳩が豆鉄砲を食らったような顔で「え？」と声を出した。一期の言葉も表情もAを戸惑わせるのに充分だったのだ。
顔の熱は下がる気配もなく、一期は気恥ずかしさが面に出て言葉が上手く続かなかった。
どうしてこんななんでもないことを、と自分の感情がわからなくなる。
ただ、羨ましい。と切に思った。
「あ、その……私のことを、一期と呼んで欲しいのですが、……嫌、でしょうか？」
「そんなことは……！」
「では、呼んでいただけますか？」
Aは無言のまま、こくり。と頷いて、声を出そうとした時だった。
「お待ちのお客様、大変お待たせ致しました！」
店員の高らかな呼び声に怯みAは言葉を飲み込んだ。店内へと他の客が入ってきてAは言いにくそうに下を向いてしまった。
一期は袋詰めされた品を受け取ると、Aにもう帰ることを告げた。
本丸へと向かう道中は変に言葉数が少なくなるということもなく、至って平常に場の空気は流れていく。ただ、先程の話題に触れることはなく、A自身が言いあぐねていた。
「……あ、あの！」
「無理に呼ばなくても大丈夫ですから」
「でも……」
「私が、……A殿と乱の仲に、嫉妬しただけ、ですので。私とも仲を深めてくだされば、と。……弟に嫉妬、など見苦しいですかな」
はは。と一期は自嘲気味に笑うと顔を伏せた。
途切れた会話が酷くAを責め立てる。たった一言、それを言う度胸がないばかりに余計な気遣いをさせてしまったのだと。
違います、貴方は見苦しくなんてない。と弁解を告げるAは「嫌なわけではないのです」と重々しく言葉を続けた。
「ただ、……私などが名刀と吟われる方々を軽々しく呼んで良いものか、と」
私は皆様方のような誇り高き刀剣ではありませんので。
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メランコリー - 面白かったです。続き気になります…！次の更新楽しみです！ (2017年2月20日 21時) (
レス) id: f9cb988cce (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - とても面白いです。(^.^) 更新待ってます！ (2016年3月26日 22時) (レス) id: d0cc45d452 (このIDを非表示/違反報告)
ナヌノキ(プロフ) - とっても面白いです！ 文才あってうらやましいです……！ これからも、更新 頑張ってくださいッ！！ (2016年1月1日 10時) (レス) id: e6d0dbd909 (このIDを非表示/違反報告)
ﾉ杜ﾉ(プロフ) - 時狐@in率低下さん» ご質問ありがとうございます。刀派というのは夢主の設定のことでしょうか。そのことについてですが、刀剣乱舞の公式設定で鶴丸国永が刀派なしと書かれており、その設定を使用しました。この作品では鶴丸の兄弟刀として書いているので同じように刀派なしとしています。 (2015年10月11日 0時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
ﾉ杜ﾉ(プロフ) - 雪乃さん» コメントありがとうございます！落ちの方はまだ考え中ですが、おそらく鶴丸寄りにはなると思います。 (2015年9月22日 12時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾉ杜ﾉ | 作成日時：2015年9月3日 17時
