検索窓
今日:18 hit、昨日:4 hit、合計:214,293 hit

【二十七】二章ー本丸日和11ー ページ28

.



静けさに包まれた夜は虫の鳴き声だけが響いていた。
灯りの消えつつある本丸をAは一人歩いていた。ある程度夜目が効くAの視界に大きな影が二つ見えた。

「月見酒、ですか?」

外に面した縁側で盃(さかづき)を傾けていた次郎太刀へと声を掛けた。

「今宵は満月ですから」

そう答えたのは隣で佇む太郎太刀だった。
二人の間には数本酒瓶が転がっている。空(から)になった盃へ酒を注ぐと、次郎太刀は「あんたも一緒に飲むかい?」と酒瓶を軽く振るった。

次郎太刀からの誘いにどう答えるか迷っていると、「やめた方が良いですよ」と太郎太刀から制止が入った。

「次郎太刀の酒に付き合うのは、酒に慣れてからにすべきです。許容も分からず潰れてしまう。それほどに飲みますから」
「やっだ、誉めたって何も出やしないよ!」
「……すでに大分酔ってますし」

呆れたような視線を送り、小さくため息を吐いた。視線の先で次郎太刀が酒がなくなった、と文句を垂れていた。

次郎太刀は残念がりながら空になった酒瓶を置いた。

「酒はないけど、一緒に月見でもするかい? まあ、肴がないから、ただ月を見るだけだけどね」

どうだい?、と尋ねる月見の誘いを断る理由もなく、Aは頷いて二人の傍に腰を下ろした。
月が綺麗だ、とAは闇夜を照らす黄色いそれに目線を合わせた。

ここの本丸には慣れたかというような話題から始まり様々な話に広がっていった。

そういえば。と次郎太刀は思い出したように呟いた。

「兄貴とAちゃんは、同じ部隊だったっけ?」
「ええ」
「はい」

ほぼ同時の声が重なった返答に次郎太刀は思わず笑いを溢した。
息があって、結構結構。と酒が入っているせいか少し大袈裟に二人を煽った。

「あー、他に誰が居たんだっけ?」
「私と太郎太刀殿の他は、一期一振殿、乱殿、堀川殿、獅子王殿です。部隊長の一期一振殿にはとても良くしていただいてます」
「その姿は私も良く見掛けます。最も彼は弟、のように接しているようですが」
「弟……乱殿と一緒に居るからでしょうか?」

次郎太刀は首を傾げるAと太郎太刀を呆れた風に眺めていた。

そろそろ鶴丸が心配している頃だろうと、Aは二人に、おやすみなさい。と告げて暗がりの廊下を歩いていった。

「……一期が、弟のように接しているだけ、なら良いんだけどねえ」

なんか酔いが覚めちまったね。と次郎太刀は呟いた。

【二十八】二章ー本丸日和12ー→←【二十六】二章-本丸日和10-



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (201 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
431人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

メランコリー - 面白かったです。続き気になります…!次の更新楽しみです! (2017年2月20日 21時) (レス) id: f9cb988cce (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - とても面白いです。(^.^) 更新待ってます! (2016年3月26日 22時) (レス) id: d0cc45d452 (このIDを非表示/違反報告)
ナヌノキ(プロフ) - とっても面白いです! 文才あってうらやましいです……! これからも、更新 頑張ってくださいッ!! (2016年1月1日 10時) (レス) id: e6d0dbd909 (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 時狐@in率低下さん» ご質問ありがとうございます。刀派というのは夢主の設定のことでしょうか。そのことについてですが、刀剣乱舞の公式設定で鶴丸国永が刀派なしと書かれており、その設定を使用しました。この作品では鶴丸の兄弟刀として書いているので同じように刀派なしとしています。 (2015年10月11日 0時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 雪乃さん» コメントありがとうございます!落ちの方はまだ考え中ですが、おそらく鶴丸寄りにはなると思います。 (2015年9月22日 12時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ノ杜ノ | 作成日時:2015年9月3日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。