【二十六】二章-本丸日和10- ページ27
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開いた障子の敷居を隔てて、うんざりした顔で催促する鶴丸はAを持つ三日月に詰め寄った。
「そう急かさぬとも良いではないか。」
三日月はまるで楽しむかのように身体を寄せているAへと視線を落とした。
Aの性を思うと、三日月への警戒心以上に反応してしまい鶴丸の顔がさらに曇っていく。
「それともAを触らせたくない事情でもあるのか？」
「っ……それ、は…………」
核心を突く問に、ドキリと脈が跳ねたのを感じた。調子を乱し返答のない様子では自分から動揺していると肯定するも同然だ。
言葉を詰まらせる鶴丸に、何処か勝ち誇った様子の三日月は追い討ちの如く静かな声でさらに煽った。
「鶴丸よ。男の嫉妬というのは醜いぞ？」
思わず否定の言葉を口にした。しかし、訂正することで余計な勘繰りをされては事態が悪化してしまうと気付き、鶴丸はすぐにそれを飲み込み、慌てて別の言葉を吐き出した。
「き、君が！ Aに無体をしかないか気が気じゃなくてな。その不安を取り除きたいだけさ」
取り繕ったのがありありとわかる何とも不恰好なものになった。
くくく、と含み笑いを浮かべる三日月は余裕綽々たる態度を見せた。
安心しろ、無理強いはせぬ約束であろう。
そう言って、名残惜しそうにしながらも渋々Aを離し、鶴丸へと預けた。
そっとAの頬を撫でながら三日月は目を細めた。
「時に鶴丸よ。お前がAに何か吹き込んだのか？ 俺を酷く避けているようだが」
「俺は何も言ってないさ。俺が必要以上に君を遠ざけるなら、それこそ約束が意味を成さないだろう」
「ならばAが俺に対して一向に慣れない理由は何だ？」
「さあ？ 俺には見当つかんが……」
鶴丸は平然と嘯(うそぶ)いた。
実際にはAの言葉からなんとなく察しているのだが、教える義理はない。Aが避けているのなら約束を破る訳ではないし、鶴丸としてはそのほうが好都合だった。
ただ、「そうか」と力なさげに呟く三日月にほんの少し罪悪感を感じた。
「……君が忘れているだけじゃないか？」
「俺が？……Aのことで忘れているもの等ないはずだが」
・
もう話すことはないだろうと、朝餉の時間を理由に障子を閉められ、三日月は仕方がなく私室へと戻った。
「どれ程時が経とうとも、Aを忘れてたことはないのだが……」
ぽつり。と吐き出された訝しげに首を捻(ひね)る三日月の呟きは、起床を始めた刀剣達のざわめきに紛れ消えていった。
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メランコリー - 面白かったです。続き気になります…！次の更新楽しみです！ (2017年2月20日 21時) (
レス) id: f9cb988cce (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - とても面白いです。(^.^) 更新待ってます！ (2016年3月26日 22時) (レス) id: d0cc45d452 (このIDを非表示/違反報告)
ナヌノキ(プロフ) - とっても面白いです！ 文才あってうらやましいです……！ これからも、更新 頑張ってくださいッ！！ (2016年1月1日 10時) (レス) id: e6d0dbd909 (このIDを非表示/違反報告)
ﾉ杜ﾉ(プロフ) - 時狐@in率低下さん» ご質問ありがとうございます。刀派というのは夢主の設定のことでしょうか。そのことについてですが、刀剣乱舞の公式設定で鶴丸国永が刀派なしと書かれており、その設定を使用しました。この作品では鶴丸の兄弟刀として書いているので同じように刀派なしとしています。 (2015年10月11日 0時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
ﾉ杜ﾉ(プロフ) - 雪乃さん» コメントありがとうございます！落ちの方はまだ考え中ですが、おそらく鶴丸寄りにはなると思います。 (2015年9月22日 12時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾉ杜ﾉ | 作成日時：2015年9月3日 17時
