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【二十五】二章-本丸日和9- ページ26

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「……Aが居ない」

それが起床した鶴丸のまず初めの言葉だった。

いつも通り起きたにもかかわらず、すでに部屋には自分の姿以外他に居なかった。
部屋の様子を見る限り、隣で寝ていた筈の相手は布団も片付け支度も済ませているようだ。

同室といっても常に行動を共にすることはない。今までは慣れない本丸での移動を心配した鶴丸が、私室を出る時などタイミングを見計らっていた。

約束をしている訳ではないし、Aが行動時間を早めただけだ。

「……一先ず、明日からは少し起床を早めるか」

なんだか自分がAに傾倒していると錯覚してしまいそうだが、それ以前に心配も度が過ぎるとただの過保護だ。
つい先日もAと意見を違えたばかりだというのに。と自身の甘さ加減には呆れてしまう。

きちり、と畳まれているもう一組の布団に鶴丸も自身の使っていたそれを合わせる。

「鶴丸」

障子を隔てた部屋の外からの呼び掛けに、鶴丸は手を止めて「何か用かい、三日月」と何気無い素振りで振り向いた。
聞きなれた声に障子越しでも見当がついた。

しかし、三日月の影を見た瞬間、鶴丸の顔は一気に険しいものへと変わった。
人ひとり抱えたようなその影の形に、鶴丸は勢いよく障子を開ききった。

部屋の前に立っていた三日月の腕には、意識なく横たわっているAが抱えられていた。

「……どうして君が意識のないAを抱いているのか、説明してもらえるか?」
「一応、弁解はしておくが、俺はAに手は出していないぞ」
「そんな格好で誤魔化しが効くとでも?」

そう言って三日月を睨みつけ、寝衣の胸ぐらを強引に掴んだ。剣呑とする鶴丸を前にしても、特に気にする様子もなく三日月は、やれやれ。と肩をすくめた。

「縁側で足を踏み外した時に、運悪く頭を打ち付けてな。意識がないのはそのせいだ」

お前が心配するだろうと、着替えもせずに連れてきてやったというのに。と恩に着せる物言いで鶴丸を諭した。

そう言われてしまうと、向けた感情の間違いに鶴丸も力を込めていた腕を引き「すまん」と謝るしかない。

「────で、いつまでAを抱いているつもりなんだ?」

誤解は解けただろう。さあ、返せ。と言わんばかりに苦言を呈する。
しかし、三日月は曖昧に笑うも動きを見せず、鶴丸の苛立ちを悪戯に刺激するだけだった。

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メランコリー - 面白かったです。続き気になります…!次の更新楽しみです! (2017年2月20日 21時) (レス) id: f9cb988cce (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - とても面白いです。(^.^) 更新待ってます! (2016年3月26日 22時) (レス) id: d0cc45d452 (このIDを非表示/違反報告)
ナヌノキ(プロフ) - とっても面白いです! 文才あってうらやましいです……! これからも、更新 頑張ってくださいッ!! (2016年1月1日 10時) (レス) id: e6d0dbd909 (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 時狐@in率低下さん» ご質問ありがとうございます。刀派というのは夢主の設定のことでしょうか。そのことについてですが、刀剣乱舞の公式設定で鶴丸国永が刀派なしと書かれており、その設定を使用しました。この作品では鶴丸の兄弟刀として書いているので同じように刀派なしとしています。 (2015年10月11日 0時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 雪乃さん» コメントありがとうございます!落ちの方はまだ考え中ですが、おそらく鶴丸寄りにはなると思います。 (2015年9月22日 12時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ノ杜ノ | 作成日時:2015年9月3日 17時

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