【二】一章-国永の小太刀1- ページ3
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「あー、もう今日は一日報告書三昧だわ。レア刀剣でもかなりの量だったし、未実装の刀剣なんて……今日中に終わるかどうか」
「大将は机仕事からっきしだしな」
「薬研、それは言わないでくれ……」
項垂れる審神者に、悪い悪いと軽い口調で肩を叩く。
「あの、私のせい……でしょうか?」
二人の様子を伺っていたAは恐る恐る声を掛けた。自身の話題で困り顔をしていた審神者の様子に少し罪悪感に似たものを感じた。
その言葉にきょとんとした後、審神者はすぐに柔和な表情を変える。
「Aのせいじゃないよ」
「ですが、私がここに来てしまったせいで貴方様のご迷惑に……!」
「いや、報告書云々は俺の責務、義務なわけだし。むしろ、これが審神者の仕事なわけで」
「そうそう。大将が事務仕事できないのは今に始まったことじゃねえし、何もなくても書類が溜まるなんてよくあることだぜ。あんたが気にすることないさ」
審神者の言葉を素直に受け止められず恐縮するAを安心させるように取り繕う。そこへ援護射撃とばかりに薬研が言葉を重ねる。
だが、薬研の話した内容に少し不満げに「それは俺が仕事できないって言いたいのか」と愚痴を溢していた。
「とにかく、俺はお前がうちの本丸に来てくれて嬉しいし、それで仕事が増えたとしても気にしない。だから、Aはそんな申し訳無さそうな顔じゃなくて、俺みたいに喜んでくれ。どうせなら俺はお前の笑顔が見たいよ」
審神者はカラリと晴れた夏の空を思わせる笑みをAに向ける。動揺の色を濃くするAは僅かに目線を下へと逸らした。
目線を逸らしたままAはか細い声で言葉を溢した。
「……あの、ふ、ふつつかもの、ですが、宜しくお願い致します」
ぎこちなくではあるが、恥ずかしそうに小さく笑みを浮かべた。
此方こそ宜しくな、と審神者はAの頭を撫でた。
温かい。初めて触れた人のぬくもりにAはむず痒さを感じた。
「……良い、主様(あるじさま)、なのですね」
審神者には聞こえないような小さな声で呟いた。
すぐ隣に居た薬研は誇らしげにAに耳打ちする。
「だろ? 俺っちの自慢の大将、だからな」
ええ、とても。とAは頬を緩めた。
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メランコリー - 面白かったです。続き気になります…!次の更新楽しみです! (2017年2月20日 21時) (レス) id: f9cb988cce (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - とても面白いです。(^.^) 更新待ってます! (2016年3月26日 22時) (レス) id: d0cc45d452 (このIDを非表示/違反報告)
ナヌノキ(プロフ) - とっても面白いです! 文才あってうらやましいです……! これからも、更新 頑張ってくださいッ!! (2016年1月1日 10時) (レス) id: e6d0dbd909 (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 時狐@in率低下さん» ご質問ありがとうございます。刀派というのは夢主の設定のことでしょうか。そのことについてですが、刀剣乱舞の公式設定で鶴丸国永が刀派なしと書かれており、その設定を使用しました。この作品では鶴丸の兄弟刀として書いているので同じように刀派なしとしています。 (2015年10月11日 0時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 雪乃さん» コメントありがとうございます!落ちの方はまだ考え中ですが、おそらく鶴丸寄りにはなると思います。 (2015年9月22日 12時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノ杜ノ | 作成日時:2015年9月3日 17時