【十四】一章-国永の小太刀13- ページ15
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────そういえば、誰かを伴って一夜を過ごすというのは人の身になって初めてのことだな。
薬研達の遠征部隊も戻り、本丸にここの刀剣全てが揃うと、細やかながらAの歓迎会が催された。顕現してすぐのAにとっては初めての食事となる、目を輝かせ一口一口慣れない箸に苦戦しつつも大層美味しそうに平らげていた。
隣に座るぎこちない食べ方の兄弟刀を微笑ましく思いながら、鶴丸はいつもよりほんの少し豪勢な料理に舌鼓を打った。
歓迎会もつつがなく終わり、各々が自由に過ごしていた。Aはというと昼間ゆっくり話せなかった刀剣達と談笑を繰り広げていた。
暫くその様子を眺めるも、話が途切れる気配がなく、鶴丸はとくにすることもなくひっそりと広間を後にした。
「…………湯浴みにでも行くか」
大浴場はすでに幾人かが利用していた。
あえて時間を使いゆっくりと湯に浸かった。一息吐くと今日の疲れが癒えていく。
入れ替わり立ち替わり何人もの刀剣達がここを訪れていた。
暫くの間、浴場で時間を潰していたが、Aの来る気配は全くなかった。
逆上せないうちに。といつもより長風呂になってしまった湯浴みを終えて鶴丸は自室に戻った。
カタン。と障子を開閉する音が響く。暗がりの中で部屋の灯りを付けると、自室をぐるりと見回した。
ここは一人部屋としては十分な広さがある。相部屋といっても太刀や大太刀が来るわけではなく、小柄なAならば特に不自由することもないだろう。
Aがここへ来るのをのんびり待つか、と考えた所で鶴丸は不安を覚えた。
「Aに部屋の位置を教え忘れた……」
個々の部屋など案内している筈もなく、迷子になる未来は目に見えている。その最中、三日月と出会いでもすれば確実に自分の部屋へと連れ込まれるだろう。
鶴丸は急いで部屋を後にした。
Aが居る可能性のある広間へ向かう途中、風呂上がりであろう加州とすれ違った。
「なあ、Aを見なかったか?」
「Aって、あの新しく来た脇差の? 確か、浴場に行くって……もうすぐ出てくる頃じゃない」
「浴場か! 助かった」
礼を告げ鶴丸は足早に大浴場へと駆けていった。
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メランコリー - 面白かったです。続き気になります…!次の更新楽しみです! (2017年2月20日 21時) (レス) id: f9cb988cce (このIDを非表示/違反報告)
桜姫(プロフ) - とても面白いです。(^.^) 更新待ってます! (2016年3月26日 22時) (レス) id: d0cc45d452 (このIDを非表示/違反報告)
ナヌノキ(プロフ) - とっても面白いです! 文才あってうらやましいです……! これからも、更新 頑張ってくださいッ!! (2016年1月1日 10時) (レス) id: e6d0dbd909 (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 時狐@in率低下さん» ご質問ありがとうございます。刀派というのは夢主の設定のことでしょうか。そのことについてですが、刀剣乱舞の公式設定で鶴丸国永が刀派なしと書かれており、その設定を使用しました。この作品では鶴丸の兄弟刀として書いているので同じように刀派なしとしています。 (2015年10月11日 0時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
ノ杜ノ(プロフ) - 雪乃さん» コメントありがとうございます!落ちの方はまだ考え中ですが、おそらく鶴丸寄りにはなると思います。 (2015年9月22日 12時) (レス) id: ed6c7bef4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノ杜ノ | 作成日時:2015年9月3日 17時